「自分と交代でリュウさんが入ると流れがガラッと変わる」
JX-ENEOSサンフワラーズはWリーグで前人未到の11連覇を達成した。絶対的リーダーの吉田亜沙美がベンチスタートに回り、大﨑佑圭が選手登録を外れる世代交代を図りながらも、皇后杯を含めた公式戦で敗れたのはレギュラーシーズンの2試合のみと、盤石の強さを見せた。
だが、藤岡麻菜美にとっては勝利の喜びを感じつつ、「ずっと悩んだシーズンでした」と自身の不甲斐なさに苦しんだシーズンだった。
吉田に代わって開幕から先発の司令塔を務めた藤岡だが、開幕前には日本代表としてワールドカップに参加しており、準備不足のままWリーグ開幕を迎えていた。
「今までは代表にJX-ENEOSの選手が4、5人いて、日本代表のバスケットボールの延長戦上にチームのバスケットボールもありました。それが今年は自分と宮澤(夕貴)だけで、リュウさん(吉田)、タクさん(渡嘉敷来夢)もJX-ENEOSに残っていました。さらに自分は昨シーズンにケガをして全くプレーしていません。チームのメンバーと一緒に練習する時間が少ない中でシーズンが始まり、噛み合っていないまま終わってしまいました」
実際に先発としてプレーしたことで、吉田との違いをあらためて思い知らされる厳しい経験もあった。「自分と交代でリュウさんが入ると流れがガラッと変わり、みんなが本来の動きをしていく。それを突き詰められるのはめちゃくちゃ悔しかったです」と藤岡は言う。
藤岡にとって吉田は良き先輩でありお手本だ。それでも「リュウさんの真似をしようとしすぎて自分らしさを忘れてしまった。自分が何を目指していて、どうなりたいか分からなくなってしまいました。今もモヤモヤしています」と、袋小路に入ってしまったのだ。
これらは優勝を決めた直後の取材での発言。11連覇を祝うチームメートとは違い、藤岡はそこに自分が貢献できたという実感を得られないでいた。
「ここを超えないと自分のステップアップにならない」
あるべき自分の明確なビジョンを描けていないことは、プレー面にも悪影響が出る。藤岡にとってはそれが不用意なターンオーバーという形で出た。その結果、「チームが皇后杯とリーグの2冠を取れたことは良かったですが、競った場面ではほぼ出られていません」と勝負どころをベンチで過ごす現状に「世代交代もあってスタートで出るのは責任があり、いろいろと学ばせてもらいました。ただ、自分がスタートで良いのかと、何回も思いました」とネガティブな気持ちになってしまうことも少なくなかった。
このように11連覇の金字塔を打ち立てたチームとは対照的に、個人としては消化不良に終わった藤岡だったが、それでも開幕早々の故障でほぼ出場できなかった昨シーズンからは再起の一歩を踏み出せたとも言える。「1シーズン通してプレーできて、スタートで欠場した試合がなかったのは一つの収穫です」と、その点では大きな手応えを得てもいる。
また、これだけ苦しんだ中でも、常に前を向いていける強さを藤岡は持ち合わせている。吉田との違いを痛感させられても「来シーズンも先発でいきたい。今シーズンの経験を生かすことが大事なので、そこはやらせてほしいです」と、悔しい思いを次に生かすつもりだ。
「自分の良さってなんだろうと悩み続けましたが、ここを超えないと自分のステップアップにもならないし、チームの連覇にも繋がっていかない。どんなに苦しくても、もっと上へというビジョンを持つことを忘れてはいけないです」と、これからの巻き返しへ強い意欲を見せる。
リーグ戦が終わり、間もなく代表活動がスタートする。この苦しんだ経験を自分の糧にできたのかどうか、その成果はAKATSUKI FIVEとしての彼女のプレーが教えてくれるはずだ。