湧川の大活躍に対して、片峯聡太コーチは「普通です」
全国高校総体バスケットボール大会の福岡県予選が6月2日、福岡県飯塚市で行われた。決勝リーグ最終戦は福岡大学附属大濠高校と福岡第一のおなじみのカードとなり、大濠が71-61で振り切り、3年ぶりの優勝を果たした。主将の湧川裕斗(3年)が3ポイントシュート3本を含む24得点で牽引し、渡邉伶音(3年)とサントス・マノエル・ハジメ(2年)らが高さのアドバンテージを生かしてリバウンドを制した。
大濠は第1クォーターに湧川が10得点し主導権を握る。第一の2-3のゾーンディフェンスに対し2本の3ポイントシュートを沈め、相手守備の態勢が整う前にドライブで得点を重ね、19-13と先手を取る。
第2クォーターに入ると、第一はこれまでガード起用してきた主将の八田滉仁(3年)をフォワードに置いて応戦し、聡と耀の『宮本ツインズ』との同時起用でテンポを上げ、この試合初のリードを奪う。しかし大濠はインサイドを強調し、セカンドチャンスから加点して37-34と逆転して試合を折り返した。
第3クォーターに2度同点に追いつかれたが、速攻での失点をギリギリで防ぎ、残り1分から3ポイントシュートファウルを連続で獲得し、7点差で最終クォーターへ。湧川がディープスリーを沈め、さらにタフショットも決めて点差を2桁に乗せると、終盤は渡邉がインサイドを制圧し、ファウルをもらいながら冷静にフリースローを沈めて逃げ切った。
新チームになって6戦全勝の大濠にとって、この1勝は格別だった。湧川も「自分たちが入学して初めてインターハイ予選で優勝できた。率直にうれしい」と頬を緩めた。今年は地元開催のため、両校は対戦前にインターハイ出場を決めていたが、『福岡1位』の座を譲る気はなかった。
この試合のベストプレーに挙げたのは第1クォーター残り1分、速い展開からドライブし、八田を抜き去って決めたバスケット・カウントだ。「ドライブするスペースが見えていましたし、(勝又)絆がローポストで構えていてくれたので、留学生のカバーが遅れました。シュートも決められると確信しました」と振り返った。
過去2年はインターハイ出場1枠を争い、第一に2連敗を喫した。2022年は前年にウインターカップを制したチームの主力だった湧川の兄の颯斗、川島悠翔、副島成翔らが残り夏冬2冠を掲げて臨んだが、第一のセカンドユニットの1-1-3ゾーンを崩せず64-70で屈した。当時1年生だった湧川は1分20秒出場し、大粒の涙を流した兄の姿が記憶に残っているという。
あれから2年。この日はチームが勢いを失いかけた場面で再三、果敢にドライブして得点を重ね、相手の守備が寄ると冷静にアシストした。「今日も流れが悪い時間帯があったのですが、キャプテンとしてプレーメイクするしかないと思っていました。第3クォーターに追いつかれた時にも、出ている5人で声をかけ合って離せたのが良かった」と振り返る。
5月の中部ブロック予選決勝では、ゾーンディフェンスに苦戦し、初めて接戦に持ち込まれたが64-63で逆転勝ちを収めた。片峯聡太コーチは試合前に「伸び悩んでいる部分があります。まだ選手に求心力が足りない」と、さらなる成長を促していた。この日の湧川の活躍を「普通です」と評するのも、より高いレベルに到達してほしいという期待の表れだ。
貫禄がついてきた、大黒柱の渡邉伶音「第一さんの激しさは想定内」
大黒柱の渡邉は2年前の悔しさに加え、昨年は負傷で欠場した2年分のうっぷんを晴らした。相手の厳しいコンタクトにもひるまず、冷静に対処し、湧川に次ぐ12得点を記録。「前回の対戦は接戦だったので火が付いたというか、油断はなかったです。第一さんの激しさも想定内でした。自分の仕事を動じずにやり続けられる選手を目指して頑張りたい」
B2のライジングゼファー福岡に特別指定選手として加入し、プレーオフも経験。大会前には日本代表のディベロップメントキャンプにも参加した。自分よりも大きい相手に身体を当ててシュートを決める技術を学んだという。様々なカテゴリーを経験し、「将来的にプレーする強度を知りました。その強度では高校だとファウルを吹かれます。自分はファウルできないので、アジャストする力が大事かな」と、余力すら感じさせた。8月まではチームで時間を過ごせるため、「Bリーグや代表活動で得たものを発信してチームに好影響を与えられる選手を目指して頑張ります」と還元していく。
湧川は「今日もたくさんのファンの応援を胸に戦えた。インターハイでも恥じないプレーをして優勝するところを見せたい」。渡邉は「インターハイは初めてなので想定外のことも起こると思う。それでも自分たちのやるべきことをやれば大丈夫」と、自信をのぞかせた。1974年に地元開催だったインターハイで初優勝した大濠。半世紀ぶりに福岡のファンの前で頂点に立ってみせる。