タイリース・ハリバートン

「オリンピックを戦いながら身体強化を進める」

ペイサーズのヘッドコーチ、リック・カーライルは「この魔法のようなシーズンを送った選手たちに感謝したい。彼らの戦う姿勢は素晴らしかった。すべての試合で、すべてのポゼッションで勝つための努力を惜しまなかった」と語り、アーロン・ネスミスも「素晴らしいシーズンだった。自分たちがこのレベルで戦えることが分かり、まだ上達の余地があることも分かった。夏に万全の準備をして、来シーズンはもっと良いものにしたい」と語った。

ペイサーズはセルティックスにスウィープ負けを喫し、ホームアリーナで相手のカンファレンス優勝を祝う姿を見ることになったが、それでも大成功のシーズンだった。カンファレンスファイナル進出はポール・ジョージの時代以来10年ぶりだが、ファンがこれだけ熱狂したのはレジー・ミラーの時代以来20年ぶりだ。敗退決定の翌日、シーズン最後の会見を行う選手たちの顔はどれも晴れやかだった。

ただ一人、フラストレーションを拭いきれていなかったのがタイリース・ハリバートンだ。「本当にイライラした。ゴミのような気分だった」というのが会見での第一声だ。「ベストを尽くしていても自分ではどうにもならないんだから、そりゃ悔しいよ。でも、プレーオフでは健康なチームが勝つということがよく分かった。セルティックスはプレーだけじゃなく、そういう意味でもすごいチームだった」とハリバートンは言う。

ハリバートンは第2戦の第2クォーターにハムストリングの肉離れを起こした。1月にやったのと同じ個所だが、それとはまた別のケガだという。ジェイソン・テイタムとのマッチアップの際に起きたと言われていたが、実際はその前に痛めていた。「ハーフタイムのミーティングにも出ず治療をして試合に戻ったけど、第3クォーターにコーチから交代を命じられた時に『もう終わりかもしれない』という予感があった。翌日は腫れがひどくて歩くのもやっとだった」

「第3戦当日に検査をして何とかプレーできると思ったんだけど、フロントや僕のエージェントも含めたミーティングで僕の欠場が決まった。ケガを悪化させないよう僕を守ってくれた組織には感謝しているけど、悔しかった。この何年かで僕とチームに何が起きていたか。勝つための準備を着々と進めていたからこそ、今シーズンの素晴らしいバスケが実現したんだ。僕抜きでもNBA最強チームを相手に2試合を戦い、あと一歩のところまでいった。仲間たちの戦いぶりを誇りに思うよ」

「でも、まだ安心はしない。今シーズンだけの一発屋じゃないことを来シーズンに証明しなきゃならない。自分たちの実力を証明するというメンタリティに変わりはないよ。今回の成功がプレッシャーになるかもしれないけど、同じ成功を求めることはしたくない。違う結果を望みたいんだ。僕らは周囲の否定的な意見や過小評価をモチベーションに変えてきた。僕はそれが好きだしね。今のチームには素晴らしいメンバーが揃っている。来シーズンも同じメンバーで戦いたいし、エキサイティングなシーズンにできると思う」

「個人的にはキャリア最高のシーズンを送ることができた。多くの人にとっても長く記憶に残るシーズンだと思う。でも、これで終わりにはしたくない。これをスタンダードにしなきゃいけないんだ。来シーズンにそれを証明するよ」

ハリバートンはこの夏のパリオリンピックに出場する。トレーニングキャンプ開始は6週間後で、それまでにハムストリングのケガは治る見込みだ。それだけでなく『健康なチームが勝つ』競争に勝ち抜くための準備も進めると言う。

「できれば82試合すべてに出場したいし、プレーオフも含めればシーズンで100試合を戦い抜くためのコンディションをどう整えるか考えている。その多くは筋力のことになるだろうね。ハムストリングをもっと鍛えなきゃならないし、そのためには適切な休養も必要だけど、シーズン中には休養が取りづらい。メディカルスタッフと僕はすでにオフの強化プランを考え始めている。それが僕の来シーズンの成長の大きな部分を占めるはずだ。このチームは若いし、みんな良くなるための時間はたくさんあるけど、それを早く成し遂げたい。だから夏を有意義に使いたいんだ。オリンピックはその助けになる。チームUSAでは誰も40分プレーしない。出場時間が減るからオリンピックを戦いながら身体強化を進められる。その挑戦が楽しみだよ」