文・写真=鈴木栄一

木下と根来の復帰で、攻守ともに落ち着きが出た大阪

2月18日、大阪エヴェッサが敵地でリーグ最高勝率の川崎ブレイブサンダースに84-81で競り勝った。これで連敗を4で止め、通算成績を19勝18敗としている。

この試合、大阪は得意とする3ポイントシュートを20本中13本成功と驚異の高確率で沈めると、第4クォーターで31-19と川崎を圧倒し見事な逆転勝利を収めた。

大阪の桶谷大ヘッドコーチは、「第3クォーターは、(ニック)ファジーカス、(ジュフ)磨々道に走られるなど川崎のトランディションオフェンスにやられてしまい、途中13点までリードを広げられてしまいました。強いチーム相手に、いつもならここで精神的に切れてしまうところでしたが、今日は我慢しディフェンスからやり直せました。そして、一番確率の良いところを攻めてシュートを打っていけました」と勝因を語る。

前半、大阪は39-33とリードを奪って折り返すも、指揮官が振り返るように第3クォーターに入ると川崎の猛攻を止めることができず。このクォーター残り3分には、ファウルの宣告を受けた後、ボールを激しく床に叩きつけたジョシュ・ハレルソンがテクニカルファウルを吹かれるなど崩れ、47-60と追い込まれる。だが、ここで踏ん張り、9点差に縮めて第4クォーターにつなげる。

そして第4クォーターに入ると、木下博之がこのクォーターだけで3ポイント3本中3本成功を含む13得点とチームを牽引。徐々に追いあげると、残り1分47秒に今野翔太の3ポイントシュートで79-78と逆転。残り13秒に木下がリードを4点に広げる値千金のシュートを沈めると、強豪の川崎から貴重な勝利を挙げた。

勝利の立役者となった木下は欠場が続いており、今日は12月30日以来と、2017年に入って初のリーグ戦出場。そしてちょうど37歳の誕生日だった。桶谷ヘッドコーチは、ベテランらしい巧みな試合運びを見せた木下のパフォーマンスを称賛している。「誕生日に背番号と同じ17得点と、本当にもっているなと思いました。前半にファウルを3つもらったことで、後半使えない時間帯は本当に厳しかったです。しかし、コートに出てからはチームをしっかりコントロールしてくれるなど、今までしんどかった部分を今日は支えてくれました」

また、木下に加え、大阪は根来新之助が11月5日以来の復帰を果たしたことも大きなプラス材料だ。司令塔の木下、そして外国籍オン・ザ・コート「1」の時間帯における日本人フォワードの要である根来が復帰したことの効果を、桶谷ヘッドコーチは「木下と根来が入ると、オフェンス、ディフェンスの両方でチームが落ち着きます。2人ともバスケットをよく知っているので、どこを攻めたらいいのか、どこに優先順位を置いて守らなければいけないのか熟知しています」と語る。

一方、敗れた川崎の北卓也ヘッドコーチは、「3ポイントシュートを高確率で決められ39失点。今週、試合への準備で大阪の強みは3ポイントと話していましたが、失点の約半分が3ポイントと、向こうの強みを消せなかったことに尽きます。終盤、相手は木下選手がベテランの味をしっかり出すなど素晴らしいプレーを見せたのに対し、ウチはミスが出てシュートでしっかり終われなかったところがこの結果になってしまいました」と敗因を分析する。

辻とスパングラーを欠く川崎、経験不足から逆転負け

大阪の3ポイントシュート20本中13本成功は、まさに出来すぎと言ってもよいものだったが、北ヘッドコーチ、主将の篠山竜青とも自分たちの守備にも問題があったと考える。

「第3クォーターは(経験豊富な)いつものメンバーで臨み3ポイントを1本も決められていません。しかし、第4クォーターにいつもと違うメンバーとなり、追い上げられた時、1対1のディフェンスで守れていたのにヘルプに行ってしまい、そこからキックアウトでやれてしまう。他にも徹底できていないところがありました」と北ヘッドコーチは言う。

篠山は敗因をこう語る。「相手の3ポイントに対し、プレッシャーをかけていこうと話していましたが、それが前のめりに行きすぎてギャンブル的になってしまいました。それでドライブで崩され、そこからのキックアウトでノーマークの3ポイントを打たれてしまう。ディフェンスでもっと締められる部分はあり、守備のミスが大きかったです」

現在、川崎は辻直人、ライアン・スパングラーと、中心選手の2人が欠場中。その結果、今までプレータイムの少ない若手選手たちを第4クォーターなど勝負どころでも起用せざるを得ない状況になっているが、経験不足もあり攻守において彼らにミスが出てしまっている面は否めない。

ただ、藤井祐眞が、「苦しいがチームが成長できる機会。このメンバーで勝っていくことがチームの成長につながる」と語るように、ここで若手が経験を積んで結果を残せればチームの大きな底上げとなる。今は川崎にとって試練の時だが、同時に進化のチャンスでもある。だからこそ、明日の試合でしっかり立て直せるかは注目だ。