「出だしからインテンシティを出して、堅実にプレーしてくれたおかげ」
琉球ゴールデンキングスは、千葉ジェッツとのチャンピオンシップ(CS)セミファイナルの第2戦を81-63で制し、本日夜に行われる第3戦へと持ち込んだ。
初戦の琉球は、出だしから千葉Jのスピードに乗ったオフェンスを止めることができずにリードを許すと、早く追いつきたいあせりからか強引なプレーでターンオーバーを連発し、62-95と大差で敗れた。両者は3月16日の天皇杯決勝でも対戦し、琉球は69-117と圧倒された。ビッグゲームで2試合続けての完敗を喫した琉球が、ここから立て直すのは相当に困難なことかと思われた。
しかし、琉球はこの崖っぷちで、激しくプレッシャーをかけるフィジカルなディフェンス、ルーズボールへの執着心と本来のプレーを取り戻す。こうして守備で流れを作ると、小野寺祥太の3連続3ポイントシュート成功などオフェンスも要所でビッグショットが飛び出し、千葉Jの反撃を抑えてリベンジを達成した。試合後、桶谷大ヘッドコーチは勝因を次のように語った。
「昨日はターンオーバーから25失点、セカンドチャンスで18失点でした。今日はターンオーバーから8失点、セカンドチャンスで10失点とかなり減らすことができました。あとはプラン通りにみんながディフェンスを遂行してくれました。千葉さんもよいタイミングでシュートを打てていなくて、ワイドオープンも結構外してくれたのはついていたと思います。ただ、そのツキがある状況に持っていけたのは、選手たちが出だしからインテンシティを出して、堅実にプレーしてくれたおかげだと思います」
前日の大敗から見事なカムバックを果たした琉球だが、初戦は完全に天皇杯の悪夢を引きずっているように思えた。桶谷ヘッドコーチも「忘れたほうがいいですけど、頭にこびりついているのかと。プレーオフになったら、それまでのことは関係ない。今やっているバスケットに集中しないといけない。それなのに自分たちでダメなところにはまっていってしまった」と語っていた。
2試合続けての大敗は、選手たちのメンタルに少なくないダメージを与えたはずだ。しかし、2試合目の琉球は、試合の最初から闘志を全面に押し出すことで、千葉J相手にようやく自分たち本来のバスケットを遂行することができた。
運命の第3戦の鍵は「どっちがタフショットを決めるか」
崖っぷちで吹っ切れた面もあるだろうが、桶谷ヘッドコーチに第2戦の前、選手たちにどんな声かけをしたのか聞くと、そこには好敵手の指揮官の助言があったと明かしてくれた。
「昨日の試合終わってすぐに、佐々宜央(宇都宮ブレックスヘッドコーチ)と話しました。『こういう状況で宜央だったらどうする?』と聞いたら、『95点取られていますけど、でもここから50点を減らせというわけではないですよね。20点でいいんですよ。20点減らすことができれば75点じゃないですか、そういう切り口で選手をどれだけ地獄から救い出してあげられるかが重要ではないですか』という話をしてくれて、そうだなと」
桶谷ヘッドコーチは、2006年1月にbjリーグの大分ヒートデビルズでヘッドコーチ代行を務めて以降、今シーズンまで全くの空白なしに指揮官を務めている。国内バスケ界でも有数の経験を誇り、昨シーズンは琉球にタイトルをもたらすなど実績も申し分ない。しかし、彼は自身を孤高の存在とすることを嫌う。人との繋がりを何よりも大切にし、周囲にアドバイスを求める謙虚さは昔から変わらない。だからこそ佐々の意見を素直に取り入れ、感謝を強調する。
「このことをみんなに伝えて、この結果になりました。メンタル的なところはやっぱり声かけ一つで変わります。宜央は40歳になったばかりなのに、よいヘッドコーチだと思わされました。安齋竜三(越谷アルファーズ)は親友ですが、宜央も常にヘルプをしてくれるヘッドコーチで、そういう人たちからいろいろと助言をしてもらって今、こういう試合ができていると思います」
本日の第3戦は、お互いに相手のやりたいことを熟知している中での文字通りの総力戦となる。桶谷ヘッドコーチは、自分たちが勝つとしたら最後までもつれる我慢比べの末だと考えており、勝利の鍵をこう語る。
「第3戦、もうここまで来たらどっちがタフショットを決めるか、だと思います。お互いまたプランを作り直して、1戦目、2戦目みたいな点差の開く試合にはならない。プラン通りに我慢強くやりながら、最後にタフショットを決めたほうが勝ちます」
今日の第3戦、桶谷ヘッドコーチは沖縄への思いに加え、同じ指揮官として認め合い切磋琢磨を続ける盟友たちの期待も背負って大一番に臨む。このしびれる状況でどんな采配を見せてくれるのか、大いに楽しみだ。