ダーク・ノビツキー

写真=Getty Images

「彼なら、あれだけの歓声をもらって当然だ」

2月25日にステイプルズ・センターで行われたマーベリックス対クリッパーズの一戦で、前代未聞の光景が見られた。

その瞬間は、クリッパーズが9点をリードして迎えた第4クォーター残り9.4秒に訪れた。すでに勝利を確定させていたはずのクリッパーズだったが、指揮官のドック・リバースはタイムアウトを要求した。不可解な行動に思えた矢先、コート内の選手、ベンチの選手、そして会場中の全員が、彼の意図を理解した。

音響スタッフのテーブルに近づいたリバースは、マイクを手に取ると「ダーク! ダーク!」と連呼し、会場のファンにダーク・ノビツキーへの称賛をリクエスト。これに会場中が盛大な拍手で応えると、さらに「Let’s go! Let’s go! Let’s go! 史上もっとも偉大な選手の一人、ダーク・ノビツキー!」と続け、さらにファンを煽った。

選手たちからも称えられたノビツキーは、親指を立てて感謝の意を表すると、手を振って歓声に応えた。試合後ノビツキーは「素敵な行為に感謝している」とコメント。「最初は、『どうしてドックはタイムアウトを取っているんだ?』と思ったよ。あと少ししか時間が残っていなかったのだからね。それで彼がマイクを握って、喋り始めた。なんと言っていたかハッキリ聞き取れなかったけれど、すごく光栄なこと。感傷的な瞬間だった」

リバースは、「あらかじめ計画していたことではない」と説明しつつ、会見でこう続けた。

「あと1回タイムアウトが残っていたので、やっただけだ。彼なら、あれだけの歓声をもらって当然だ」

リバースの行為には、マブスのヘッドコーチ、リック・カーライルも感謝を示した。

「私が目にした光景の中でも、もっとも素晴らしい瞬間の一つ。近い演出はあっても、今日の彼の行動はオリジナル。今までに見たことがない行動だった」

とはいえ、繰り返しになるが、ノビツキーはまだ正式に今シーズン限りでの現役引退を表明していない。「彼らが自分のために決断してくれているのかな」と、冗談を交えて語ったノビツキーだが、敵地のファン、相手チームの選手から称えられることに、ノビツキーも心を動かされている。

「(引退は)今シーズンの残り試合を踏まえて決めること。でも、感謝している。感動的な瞬間を与えてくれた会場もいくつかあった。ファンのみんなの反応はすごいね。本当に感動している」