「12年の中で、何もかかっていない試合は初めてでした」
5月5日、Bリーグ史上に残る名選手である川崎ブレイブサンダースのニック・ファジーカスが、横浜ビー・コルセアーズ相手に現役最後の試合を終えた。
川崎は出だしから横浜BCのトランジションを止めることができず。その結果オープンシュートを多く打たれたことも響き、第1クォーターでいきなり15-30とダブルスコアをつけられる。その後、粘りを見せたものの、横浜BCペースで試合はずっと進んでいき79-87で敗れた。
ファジーカスは27分41秒出場で10得点8リバウンド5アシストを記録。前日の試合でチャンピオンシップの望みが絶たれ、NBL時代を含め日本でのキャリアで初めてポストシーズンを逃したこともあり、次のようにラストゲームを振り返った。
「試合前から少し感傷的になっていました。(日本での)12年の中で、何もかかっていない試合は初めてでした。それでいつも通りの集中力があったかと言われたら、そうではなかったかもしれないです。ただ、最後の試合ということで自分のベストを尽くしました」
そして試合後のセレモニーで行われた胴上げについては、粋な演出をしてくれた川崎、横浜の選手たちへの感謝を強調している。「(篠山)竜青がこっちを見て、『日本の文化』と言われました。これまで見たことはあったけど、今日、自分がやられるとは思っていなかったです。(僕が持ち上げられたのは)鎌田のおかげです。彼が大部分を支えていてくれたと思います(笑)」
「自分ができることをやってきた。全てを出し切った自負はあります」
ここ数シーズンの川崎を振り返ると、2021-22シーズンは42勝13敗でCSセミファイナル敗退、2022-23シーズンは40勝20敗も、CSを満身創痍で戦ったこともあってファーストラウンド敗退。そして、今シーズンは33勝27敗と右肩下がりとなっている。
結果論ではあるが、ファジーカス中心のチームであり続けた川崎は、大黒柱の衰えとともに失速していった。勝負の世界の厳しさを知り尽くすファージカスは、全身全霊をかけて戦った末での結果を受け入れている。それでも「すごく残念な結果でした」と正直な気持ちを吐露した。「何もかかっていない試合で、起き上がってしっかりとパフォーマンスをしないといけないのは少ししんどかったです。最後がこのような終わり方になるとは思っていなかったです」
一方で「やりきった感覚はあります」と語る。そこにはリーグ随一のスコアラーであり続けるための準備、ハードワークの高いスタンダードを維持することが難しくなってきた現実がある。
「歳を重ねるごとにモチベーションの維持は難しくなっていきます。ベストであり続けるため練習後に個人のワークアウトをどれだけやるか。8年前とかであれば、もっとやりたいと思っていましたが、年齢によって身体の感じ方は違っています。それが歳を取るということです。ただ、その中でも自分ができることをやってきた。すべてを出し切った自負はあります」
ハードワークによって他の選手たちよりも多くの年齢の壁を乗り越えてきたファジーカスは、トッププレーヤーであり続けることに大きなこだわりを持ち続けてきた。だからこそ、「引退する時、おそらく自分の最も良くない姿を見せることになるのは辛いです。今まで積み上げてきたものすべてを出し尽くしても、時の流れには勝てない。競技者であり、多くの努力をしていた人間として、それを受け入れることは難しいことでした」と語っている。
衰えたとはいえ、今のファジーカスは引き続き多くのチームが欲する帰化選手だ。しかし、彼は中心選手であることに誇りを持ってこれまで研鑽を積んできた。この譲れない思いの強さが最後まで出た彼らしいラストゲームだった。
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