第3クォーターにエンジン全開、18得点を挙げる
レギュラーシーズン最終戦の対戦で勝利したサンズがプレーインを回避する6位に入り、敗れたティンバーウルブズは首位から転落して3位になるというドラマがあった両チームの対戦は、ウルブズとの相性の良さを見せるサンズのリードから始まりました。しかし、プレーオフの経験を持つスーパースター軍団の前に、アンソニー・エドワーズが立ちふさがります。
ツインタワーのウルブズはケビン・デュラントに対してカール・アンソニー・タウンズがマッチアップすることになります。ディフェンスの良い選手が揃うとはいえ、『ビッグ3』のサンズを相手にすべてのマッチアップで優位に立つことはできず、デュラントのジャンプシュートが落ちるのを待つしかありませんでした。
我慢の展開となったウルブズですが、ベンチメンバーが増えてくる時間帯になると選手層の差で上回り始めます。試合を通してベンチポイントで41-18と圧倒しただけでなく、ニキール・アレクサンダー・ウォーカーのマンマークはサンズオフェンスを停滞させました。スターターのジェイデン・マクダニエルズとともにプレッシャーを掛け続けてデビン・ブッカーをフィールドゴール成功率31%の18得点に抑え込みました。デュラントにはやられてもブッカーを止めたことは、この試合の大きなポイントでした。
オフェンスではタウンズがポストアップからトリッキーなパスを通し、フリースロー8本もすべて決めるなど確率の良いフィニッシュで、ウルブズは前半のうちに逆転に成功します。余裕のある展開に持っていけたことで、前半のエドワーズはほとんど目立ちませんでした。
再びスターター同士の戦いになる第3クォーターの序盤は、またもデュラントが簡単に得点を奪っていきます。フィールドゴール17本中11本を決める効率の良さで31得点を奪ったデュラントに対する答えはウルブズにはなく、一気にサンズペースになっていきましたが、止められないならば点を取り返せばとばかりに、エドワーズが次々とシュートを決めて対抗しました。
ドライブからのフェイダウェイ、ステップインでかわしてのレイアップ、突然のディープスリーとやりたい放題となったエドワーズは第3クォーターだけで18点を奪います。どうにもできなかったサンズがダブルチームを仕掛け始めると、エドワーズは時間を使ってしっかりとディフェンスが寄ってくるのを待ってからパスをさばき、チームメートの3ポイントシュートに繋げました。
昨シーズンまでのエドワーズであれば爆発力のある個人技で次々と得点を奪っていくことはありましたが、それは個人の好不調に任せたパフォーマンスでしかなく、試合展開に応じたプレーではありませんでした。しかし今シーズンのエドワーズは、この試合で見せたようにチームメートの調子が良ければ任せ、チームが苦しくなったところで本領を発揮するギアの上げ下げをしながら得点を奪うようになりました。加えてディフェンスの動きをしっかりと見ることで判断力が上がり、サンズのディフェンスが自分に食い付くのを見極めて余裕を持ったプレーで攻略できるようになっています。
第4クォーターも危なげなく試合をコントロールしたウルブズが120-95で完勝。大事なプレーオフ初戦でエドワーズが記録した33得点9リバウンド6アシストというスタッツは、今のNBAではスペシャルな活躍とは言えません。しかし、何もかもをやるのではなく、必要な役割だけをこなしたエドワーズは、スタッツ以上の強烈な印象を残す『パーフェクト』なプレーを披露したと言えます。
レギュラーシーズンの対戦ではサンズが3連勝しており、アップセットの可能性が高いと見られたシリーズですが、その初戦でエドワーズは自身の偉大さを見せつけ、チームを勝利に導きました。デュラント相手の1on1を制した時は「オレがNo.1だ」と誇示するかのように雄叫びを上げており、ワガママなエースの雰囲気もいまだ残していますが、感情的なアクションとは対照的にプレーは冷静で、『プレーオフで勝てるエース』だと示したシリーズ初戦となりました。