「しっかり自分のことを信じていますし、打ち続ければシュートは入る」
4月20日、宇都宮ブレックスはホームでアルバルク東京との東地区首位決戦を行い、80-76で激闘を制した。これで宇都宮は、地区優勝へのマジックを1としている。
試合の立ち上がり、リズムをつかんだのは宇都宮だった。比江島慎の2本を含む4本連続成功の3ポイントシュート爆発と、強度の高いディフェンスでいきなり2桁のリードを奪う。そのまま、ボールがよく動き、内と外のバランスの取れたオフェンスを維持して27-19と先行する。
第2クォーターに入るとA東京が反撃。ディフェンスでしっかりアジャストすると、オフェンスでは、このクォーターだけで11得点を挙げたアルトゥーラス・グダイティスを軸にしたインサイドアタックで確率良く得点。42-42と追いついてハーフタイムを迎える。
後半に入ってもA東京は、ディフェンスで圧力をかけて主導権を握る。しかし、宇都宮はここからDJ・ニュービルの爆発によって悪い流れを断ち切る。比江島が第3クォーター終盤に4つ目のファウルを喫してベンチに下がるが、第4クォーターに入ってもニュービルの勢いは止まらない。ファウルを受けながら3ポイントシュートを沈めるビッグプレーも飛び出すなど、宇都宮は第4クォーター残り7分で71-61と突き放す。
この劣勢の中でもA東京は粘り強いディフェンスを続けることで流れを引き戻す。そしてレオナルド・メインデルや安藤周人の3ポイントシュートが飛び出し、残り2分で宇都宮のリードはわずか1点にまで縮まった。しかし、A東京の決定力不足にも助けられながら、宇都宮はこの勝負どころで守備の集中力を最後まで切らさず。しっかりとプレッシャーをかけ続けてタフショットを強いることで激闘を制した。
勝利の立役者となったニュービルは、前半は4得点に留まったものの後半だけで20得点を記録。「前半はイージーなシュートを外してしまいました。後半、1本目の3ポイントシュートを決めたことで、自分の流れに乗ることができました。しっかり自分のことを信じていますし、打ち続ければシュートは入ると思ってプレーしています」
このようにニュービルは後半の大爆発について振り返る。そして2大エースの相棒である比江島がファウルトラブルから第4クォーターはわずか1分50秒のプレータイムに留まる状況においても、「僕のメンタリティーは常に同じです」と、得点への意識が強まることはなかったと言う。そこには、個に依存しない宇都宮のチーム力への自信がある。
「マコがファウルトラブルになっても、自分のモチベーションだったり、チームに対する自信が変わることはなかったです。例えば今日はセイジ(鵤誠司)が素晴らしい活躍をしたり、誰かが出られない状況になったら他の選手がステップアップして、みんなが貢献できます。それがこのチームの素晴らしさです」
竹内、渡邉の両ベテランによるスタッツにでない貢献も大きな勝因に
佐々宜央ヘッドコーチは、ニュービルのフィットについて序盤と今では全く違うと強調する。「DJの今のパフォーマンスは、同じ点数を取っていても前半戦とは内容が違います。ボールが動きながら彼が最後に決める状況になっているので、周りの選手のフラストレーションも少ないです。彼が、より周りの選手にパスを分散できているのもチームとしての成長です」
ニュービルも「シーズン序盤はお互いを知ろうとしている段階でした。シーズンを通して、たくさんの練習を重ねてお互いの求めていることがわかり、ケミストリーが高まっていると感じます」と、連携の向上に大きな手応えを得ている。
この試合、ニュービルのような際立つスタッツを残すことがなかったが大きなインパクトを与えたのが竹内公輔、渡邉裕規の両ベテランだった。第4クォーターで竹内は9分45秒、渡邉は8分10秒のプレータイムだったことが、貢献度の高さを何よりも示している。佐々ヘッドコーチは、次のように2人がもたらした効果を絶賛する。
「今日、公輔がゾーンオフェンスを助けてくれました。自分たちが規律を持ってプレーできたのは公輔のおかげで、ゲームの安定感をもたらしてくれた。本当に大きい活躍で、『また、やってくれた』という感じです」
「ナベがいると、よりコミュニケーションが取れます。彼は不思議なキャラクターを持っていて、外国籍選手も言いやすいです。ウチのチームは静かな選手が多いですが、劣勢の時にはどれだけ声を出してやるかが大事。ここ10試合くらい、本調子でないスタートからナベが繋げてくれている試合は多いです。シュートだけでなく、いろいろなところで助けてくれています」
ニュービルという目玉の新戦力は期待通りの活躍を見せ、竹内、渡邉とBリーグ初年度から在籍している百戦錬磨のベテランたちも健在ぶりを示すした。ニュービルが強調する、チーム力の高さをあらためて示した勝利だった。