ハイメ・ハケスJr.

バム・アデバヨ「僕らは普通の第8シードじゃない」

ブルズを撃破して第8シードでのプレーオフ進出を決めた後、ヒートを率いるエリック・スポールストラは「この試合に至った経緯は忘れよう」と語った。「プレーインの初戦を落とすのは最悪で、イライラするものだけど、乗り越えればいい。プレーイン・トーナメントは出たいものではないが楽しいよ」

プレーインの初戦ではセブンティシクサーズに1点差で競り負け、プレーオフで恐るべき力を発揮するジミー・バトラーを膝のケガで失うこととなった。最悪の展開ではあったが、ブルズを相手にヒートは完璧なパフォーマンスを見せて112-91で圧勝し、プレーオフへと駒を進めた。

試合開始から2分半の間、ブルズはニコラ・ブーチェビッチ、アレックス・カルーソ、アヨ・ドスンム、デマー・デローザンと異なる選手が5本中4本のシュートを決め、先のホークス戦からのシュートタッチの良さの継続を感じさせた。だが、そこからヒートの仕掛けるディフェンスにハマってシュートが全く入らなくなる。ブーチェビッチのポストプレーもデローザンのアタックも鋭いダブルチームに阻まれ、ペイントエリアを攻められないまま放つ3ポイントシュートはリムに嫌われ続けた。

こうしてブルズのシュートが落ち始めるとヒートがトランジションを連発する。タイラー・ヒーローとバム・アデバヨに依存せず、若いニコラ・ヨビッチとハイメ・ハケスJr.も攻守に思い切りの良いプレーを連発。7分半で26-2のランを見せ、第1クォーターで34-17と大きなリードを奪った。

その後、ブルズのシュートタッチが多少持ち直したところで、ヒートのディフェンスの激しさと執拗さは変わらなかった。アデバヨがベンチで休む時間帯にはケビン・ラブが、ヒーローが休めばダンカン・ロビンソンが活躍することで、ヒートの良い流れは途切れない。ブルズは素早いパスワークで完璧に崩してのコーナースリーをドスンムが決められず、逆にそのまま速攻でヒーローに3ポイントシュートを決められるなど、立ち直るきっかけをつかめなかった。

ヒートは22点リードで迎えた第4クォーター最初のプレーで、ゾーンディフェンスでデローザンの行き場所をなくしてターンオーバーを引き出すと、すぐさまトランジションに走ったハケスJr.がダンクを叩き込む。この時点でほぼ勝敗は決したと言っていい。カセヤ・センターに詰め掛けたマイアミのファンは大声で「We want Boston!」とコールした。

これでヒートはセルティックスと対戦することになった。過去5シーズンで4度目のプレーオフでの対決。今回はカンファレンスファイナルではなくファーストラウンドで、『プレーオフ・ジミー』を欠いての勝負となるが、アデバヨは自信たっぷりに「僕らは普通の第8シードじゃない」と語る。「泥沼の戦いになるだろうね。セルティックスとの試合はいつも拮抗して、きれいじゃないけど最高のバスケになるんだ」

昨シーズンはゲイブ・ビンセントにマックス・ストゥルースが秘密兵器として大活躍した。彼らは移籍したが、今はハケスJr.やヨビッチが台頭しつつある。

ルーキーだが主力として戦う姿がすっかり定着したハケスJr.は「責任感を持って、自分らしくプレーしたい。つまり、自分以外の誰かになろうとするつもりはない」と、ジミー・バトラーの穴を埋める意識はないと語る。だがそれと同時に、彼はバトラーの影響を認めた。「ジミーがコート上でその激しさを発揮すると、チーム全員が彼の背中を追いかけ、それでチームが一つまとまる。バスケへの取り組み方、何があっても動じないメンタルを、僕は彼から学んだつもりだ。点を取ることもスティールもリバウンドも、勝つためならどんなプレーでもやる。その激しさを僕が出していきたい」

ジミー・バトラーはいない。しかしヒートはプレーオフを戦う準備万端だ。セルティックスは説明しがたいストレスを感じながら、現地4月21日のプレーオフ初戦を迎えることになる。