「しっかり我慢して足を動かし、ディフェンスからオフェンスに繋げられた」
Wリーグファイナル第2戦、デンソーアイリスは富士通レッドウェーブに73-62で勝利し、逆王手をかける形で明日の第3戦へと持ち込んだ。
第1戦のデンソーは57-64での敗戦が示すように、富士通の激しいディフェンスに手を焼き、後手に回ってしまったことで持ち味であるオフェンスの力強さに欠けて得点が伸びなかった。しかし、今日は16本のオフェンスリバウンドを獲得と、ゴール下の争いで主導権を握り、要所で積極的なインサイドアタックと本来のオフェンスを取り戻したことが勝因となった。
また、得点面でいうと馬瓜エブリンの17得点を筆頭に、6人が8得点以上とバランスの取れたチームオフェンスで的を絞らせなかったことも光った。この多彩な攻めを導いたのが木村亜美だ。東京医療保健大学から加入して2年目の若手ポイントガードは、テンポの良いパス回しに加え、自ら積極的に仕掛けてのパスアウトで次々と味方のシュートチャンスを創出。また、守備でも前から激しくプレッシャーをかけ続けた。
6得点10アシスト2スティールと攻守で起点となった木村は、敗れた初戦との違いをこのように振り返る。「昨日の試合は、自分たちの足が止まって相手に好きなようにやられてしまいました。今日は相手の流れの時もありましたが、その時もしっかり我慢して足を動かしてディフェンスからオフェンスに繋げられたのは良かったです」
デンソーは2戦先勝のファイナルで初戦に敗退と後がない中、第1クォーターに14-24と大きな苦境に陥った。だが、それでもチームに焦りや動揺はなかったと木村は語る。「点差が空いた時も、みんなで『大丈夫!自分たちのプレーをしっかりやっていこう、我慢だよ。全然、悪くないよ』と、声がけができていました。(劣勢の時でも)まだまだ、自分たちはやれるという気持ちを全員が持てていたと思います」
また、10アシストが示すように司令塔の役割をしっかりこなした自身のプレーを「反省としてちょっとターンオーバーが多かったことがあります。ミスを減らし、しっかりとリングにアタックしてみんなを生かせるようにしていきたいです」と総括している。
「自分がやるぞ、という気持ちを持てるのは周りに心強い先輩がいるからこそ」
デンソーは髙田真希、赤穂ひまわり、馬瓜の日本代表トリオを中心に、実績十分な選手たちが揃っている。自ら仕掛けていける打開力を備えた選手たちが複数いるが、それでも木村がコートに立っている時、ハーフコートではほぼ全てにおいて彼女からオフェンスが始まる。約30分のプレータイムも含め、木村は代表トリオと共にデンソーの中心を担っている。
「楽しいです。本当に楽しいです。一緒にできてよかったと思っています」と百戦錬磨の先輩たちと一緒にプレーできる喜びを語る木村は、ファイナルの大舞台でもいつも通りのアグレッシブなプレーを見せている。そして、それはお姉さんたちのサポートがあってこそと強調する。「自分がボールをもらうことは多いですが、リツさん(高田)、ダンさん(馬瓜)、ひまさんなど心強い先輩たちがたくさんいます。その面ではプレッシャーというより、自分がやるぞという気持ちになります。この気持ちを持てているのは周りに心強い先輩がいるからこそと感じています」
また、木村がマッチアップする相手は、セミファイナルのENEOS戦では宮崎早織、今回のファイナルでは町田瑠唯と、日本代表のトップ選手たちだ。「自分は下の立場なので本当にチャレンジャーとしてやっています。やられても引かない立ち向かっていくマインドで、コートに立てています」
1対1の局面ではドライブでゴール下への侵入を許すなど、やられてしまう場面もあるが、ここでもチームメートのサポートで強い気持ちを保てていると感謝する。「やられて辛いと感じる時もありますが、そういう時はリツさんが「大丈夫だよ」、ダンさんが「ここ、もう1回止めるよ」と言ってくれるので落ちる暇がないです。自分で立て直しつつ、周りの人にも助けられています」
最後に運命の第3戦へ木村は、次のように意気込みを語ってくれた。「ルーズボール、リバウンドで、細かいところでも集中力を切らさずに全員で取り切っていくことが本当に大事です。個人としては気持ちを高め、絶対に引かないメンタルでいくことです。頑張ります」
この発言のように、木村が今日のように強いメンタルでゴール下へアタックし、味方のシュートチャンスを作り出すことができれば、デンソーのオフェンスは間違いなく機能する。皇后杯との二冠達成へ向け、木村がらしさ全開のプレーをできるのか大きな注目だ。