ダンテ・エクサム

起死回生の同点ブザースリーで逆転勝利を演出

マーベリックスはロケッツ戦のティップオフから6分間で5-24と低調すぎるスタートを切った。第2クォーター終盤からようやく目を覚まして反撃を開始するも、序盤の不用意すぎる大量ビハインドは重くのしかかった。

第4クォーター残り25秒で126-129と3点差。好調のカイリー・アービングにボールを託すも3ポイントシュートがリングに嫌われ、残り8秒でファウルゲームに。1本決めれば勝敗が決する場面だが、ここでジャバリ・スミスJr.がフリースローを2本とも落とす。PJ・ワシントンがリバウンドを確保し、ダンテ・エクサムが急いでボールを運ぶ。ルカ・ドンチッチがボールを受け取ると、ロケッツの2選手がシュートを阻みに行く。残り時間はわずかだったが、ドンチッチは冷静にワイドオープンのエクサムを見つけてパスを返す。右45度のキャッチ&シュートをエクサムが決め、土壇場でマブスが追い付き、オーバータイムを18-7と圧倒して147-136の逆転勝利を収めた。

マーベリックスはここ1カ月で14勝2敗と、今のNBAで最も勢いのあるチームだ。サンズ、キングスと6位争いをしていたはずが、ここで抜け出すだけでなくペリカンズも抜いて現在5位。ドンチッチとカイリーが絶好調をキープしていることに加え、このロケッツ戦で見せたようにチームの信頼関係も強固になっている。オーバータイムにもつれた激闘が終わる瞬間、ドンチッチとカイリーは肩を抱いてお互いの健闘をねぎらった。

「シーズンのこの局面で良い位置にいるために、お互いにどれだけ努力しているか分かっているからね。シード権がどうなるかは別として、僕らはコンビとして攻守両面で全力を尽くしている」とカイリーは言い、ドンチッチは「疲れ切っていたから彼の肩を借りたんだ」と冗談を飛ばし、「カイリーは素晴らしい才能でチームを救ってくれる」と続けた。指揮官ジェイソン・キッドもこう語る。「勝利を祝う姿を見れば、チーム内のケミストリーが分かるものさ」

ただし、この試合でのヒーローはエクサムだ。ベンチからの出場で35分プレーし、14得点9リバウンド2アシスト。コートに立っていた間の得失点差はドンチッチやカイリーよりも良い+23だった。エクサムは先週のキングス戦でも決勝3ポイントシュートを決め、ドンチッチが休養した先のウォリアーズ戦では先発ガードとして勝利に貢献している。エクサムは今シーズン19.7分の出場で8.0得点と、シュートを武器にする選手ではないのだが、それでもドンチッチもカイリーも彼に信頼を込めてパスを出す。

2014年のNBAドラフト1巡目5位指名でジャズに加わったエクサムは、1年目から即戦力として活躍するも、そのシーズンが終わったオフに左膝前十字靭帯断裂の大ケガを負い、3年目には肩のケガでほとんどプレーできず。その後はドノバン・ミッチェルの陰に隠れることに。キャバリアーズに移籍するも活躍できず、2021年オフにトレード先のロケッツで解雇された。ここで彼はヨーロッパに渡り、バルセロナとパルチザンでプレーしている。

「自分を再生させる旅だった」と、エクサムは先月の『Yahoo! Sports』の取材に語っている。「大事なのは自信だった。自信がないとプレーが安定しない。シュートを1本外すと、パスを1本ミスすると動揺してしまう。そしてNBAではスター選手が何人もいて、彼らにプレーを託す役割をやっていては自信を取り戻すのが難しい」

「ヨーロッパに行ったきり戻って来れない選手は多い。最初はNBAに戻ることだけを考えていたけど、ヨーロッパでのプレーを楽しみつつ、自分を成長させることにフォーカスした」とエクサムは言う。ハードスケジュールをこなせるコンディション管理、苦手のディフェンスで負けないフィジカル、決して得意ではなかったシュートといった課題を克服し、マブスからのオファーを得てNBA復帰を果たした。

そして今、ドンチッチとカイリーに続く第3のプレーメーカーとしてエクサムは存在感を放っている。ボールをプッシュして速いテンポを作り出すエクサムのスタイルは、マブスのオフェンスに良いアクセントをもたらす。かつては『守れない選手』という評価だったが、ケガの心配なくタフに戦えるようになった今、その弱点は克服した。そしてシュートも、ここ一番の一発を決められるようになっている。

ドンチッチとカイリーが揃って絶好調なのが今のマブスの強さの原動力となっているが、決してそれだけではない。エクサムのような貴重なロールプレーヤーがイキイキと活躍していることもまた、チームに大きな勢いを与えている。