並里成

ビッグマンを欠く苦しいチーム状況ながら群馬が連勝

B1第30節、群馬クレインサンダーズvs信州ブレイブウォリアーズの第2戦が4月7日に開催された。第1戦に続き、オーバータイムとなる死闘となったが、89-85で群馬が連勝した。

前日同様、トレイ・ジョーンズを中心にオフェンスを組み立てる群馬だったが、信州のインサイド攻勢に手を焼いた。しかし、序盤からベン・ベンティルやコー・フリッピンの個人技が冴え、着実に得点を重ねていき、スティールからのファストブレイクが決まったところで、信州に早くもタイムアウトを取らせることに成功。その後、栗原ルイスにタフな3ポイントシュートを連続で決められて追撃を許すものの、この日好調なベンティルが3ポイントシュートを連続で成功させ24-15とリードして第1クォーターを終えた。

第2クォーター。並里成とジョーンズの連続3ポイントシュートで先行した群馬だったが、連携ミスが出て失点を重ねてしまう。タイムアウトを取って直しを図るが、攻め手が見つからない重いオフェンスが続き、その間にジャスティン・マッツに連続得点を許し。4点差に迫られたところでオフィシャルタイムアウトを迎える。その後も苦しい展開が続いたが、前半終了のブザー直前にフリッピンがプットバックで押し込み、45-41とかろうじてリードして前半を終える。

後半に入り、勢いに乗りたかった群馬だったが、ファウルがかさみ思うような展開にならない。早い段階でチームファウルが5に到達した上、インサイドの要として機能していたベンティルがオフェンスファウルに続き、インサイドでも個人3つ目のファウルを犯しハードなディフェンスに行けない状況に。それでも、辻直人が4点プレーを成功させ、次のポゼッションでもフリースローをしっかり成功させてリードを2桁に乗せる。信州も三ツ井利也の3ポイントシュートや山本楓己のアタックでビハインドを詰めて膠着した展開のまま最終クォーターへ。

良い形のオフェンスを作れている群馬だったが、シュートミスが続き得点が伸びず、信州に2本の3ポイントシュートを許しリードが溶け出す。温存していたジョーンズがコートに戻り、鋭いドライブから加点したが、残り時間と点差をコントロールしようと時間を使ったオフェンスを展開するも逆にリズムを崩し、信州に猛追を許す。残り2.1秒、栗原にタフショットを決められ、オーバータイムへ持ち込まれた。

オーバータイムに入ると、互いのディフェンス強度が高く、両者とも得点がないまま2分が経過。均衡を破ったのは、ベンティルの3ポイントシュートだった。その後、群馬はジョーンズのフリースローとベンティルのアタックでリードを奪うことに成功。1、2ポゼッション差を行き来する緊張感の高い展開となったが、追い上げる信州をどうにか振り切り4点差で勝利した。

並里成

水野HC「みんながチームのためにやるという姿勢が見られる試合でした」

群馬は前節のアクシデントにより、マイケル・パーカーとケーレブ・ターズースキーの主力インサイド選手を欠いた。復帰目安が4週間とリリースされており、その通りであれば残りのレギュラーシーズンの大部分を2人抜きで戦い抜かなければならない。ただでさえ簡単に勝てる試合などない中、チャンピオンシップ進出を争っているチームにとっては大きな痛手である。

そんな中での連勝に水野宏太ヘッドコーチは「みんながチームのためにやるという姿勢が見られる試合でした。終盤に追いつかれたとは言え、これだけサイズが劣る中でもフィジカルにプレーできたのは価値のあるものだったと思います」と評価した。

主力2人がいない分、他の選手の役割や負担が大きくなるのは当然だ。代わりに出場するインサイド選手に注目が集まることもあるだろうが、この試合でいつもと違う奮闘を見せていたのがポイントガードの並里成である。

序盤から積極的にリバウンドに絡んでいく姿もあれば、ディフェンスではビッグマンへのヘルプなど、簡単にインサイドでやらせないような意識が見られた。並里は「ビッグマンが少ないので、インサイドをしっかり固めないといけない状況でした。それでもやられる時はあるので、ファウルを使える選手は使っていこうと話しました」と振り返る。

琉球ゴールデンキングスなど強豪チームにも所属した経験から、ベテランとして、チームリーダーとして若いチームに還元できることは多い。この苦しい状況でも「それぞれが自分の役割をやろう、チームとして決められていることをしっかりやろうと声をかけています」と言うが、実際にコート上で厳しい眼光でチームメートと話す姿が何度も見られた。

さらに「みんなスタッツに目が向いて、自分は何点取ったとかになってしまうことがありますが、フォーカスするのはそこじゃないと話しました」と続ける。『ファンタジスタ』と称され、華麗なハンドリングやアシストパスなどの個人技に目が行きがちだが、こうした発言からも絶対的なチームプレーヤーであることが分かる。

連勝も束の間、今週の水曜日にはリーグ首位の宇都宮ブレックス戦、週末にはチャンピオンシップ出場権を争う千葉ジェッツとの対決が待っている。「宇都宮さんはリーグの中でも一番タフなチームだと僕は思っています。間違いなくインサイドを攻めてくるので、出ている5人が身体を張って試合を進めていく必要があるゲームになると思います」と並里は展望を語った。

今節を連勝で終えて、ワイルドカード下位の島根スサノオマジックまでわずか1ゲーム差に迫った。上位チームとの対決が続くが、ここを良い形で乗り切ることができればチーム力はさらに増すだろう。主力が欠場する中、どのようにチームとして戦っていくのか、群馬の残り10試合に注目したい。