原修太

高さの大きな不利を、速さと創造性を押し出した5アウトのスタイルで上回り快勝

千葉ジェッツが3月30日、ホームで川崎ブレイブサンダースと対戦した。前の試合でゴール下の要ジョン・ムーニーが故障離脱した千葉Jだが、5アウトからの機動力を生かした、持ち前のポジションレスバスケットボールで川崎を圧倒し、91-77で快勝した。

試合の出だしから千葉Jは、川崎を攻守で圧倒する。ジョン・パトリックヘッドコーチが試合後の会見の冒頭で「素晴らしかった」と言及した、初先発の内尾聡理による藤井祐眞へのディフェンスを筆頭に、平面での激しいプレッシャーで川崎にタフショットを打たせていく。そこからトランジションへに繋げ、確率良くシュートを決め、出だしで17-3のランを生み出した。

その後、シュート確率が落ちてくる中でも、千葉Jは各選手がゴール下に積極的に飛び込むことでオフェンスリバウンドを取ってのセカンドチャンスへと繋げて流れを渡さない。隙のないオフェンスで大量得点を奪い52-40で前半を終えると、後半も攻守で川崎を上回った。タフな守備で、川崎に単調なオフェンスを繰り返させると、スピードに乗った攻めからズレを作りオープンシュートを確実に決めていく。第3クォーター残り5分でリードを20点に広げ、そのまま楽々と逃げ切った。

ムーニー、クリストファー・スミス不在の千葉Jは、外国籍が203cmのゼイビア・クックスのみで、帰化枠のアイラ・ブラウンはフィジカルが強いが193cmしかない。一方の川崎は207cmのニック・ファジーカス、208cmのロスコ・アレンとジョーダン・ヒースのビッグラインナップが先発。サイズでは圧倒的な不利なマッチアップとなったが、スピードと運動量で圧倒することで、サイズのマイナスを全く感じせなかった。

まさにこの試合の千葉Jは、持ち味であるスモールバスケットボールの強み全開での圧勝だった。パトリックヘッドコーチは、「アイラ、ゼイビアはセンターではないです。ビッグマンがいない弱点もありましたが、有利な点は外から打てること。ディフェンスでは、外からプレッシャーをかけられます」と語り、5アウトへの強いこだわりを続ける。

「私は20年以上、5アウトをやっていて、JBL(NBLより以前の実業団リーグ)のボッシュでコーチをやっていた時代から続けています、ポジションレスだから、(富樫)勇樹ではなくゼイビアがポイントガードをやることもできる。パーフェクトなシステムとは言いませんが、オフェンスで選手たちはクリエイティブかつ自由にプレーできます。ディフェンスは厳しくやらないといけないですが、選手としてはこの方が楽しいと思います。ビッグマンがいても、いなくてもできるシステムです」

原修太

キャリアハイ更新の25得点「チームメートが流れを作ってくれたおかげ」

外角シュートがあり、強靭なフィジカルと機動力で、ガードからビッグマンで守ることができる。千葉Jのスタイルを象徴する原修太は、この試合で3ポイントシュート15本中7本成功を含むキャリアハイの25得点をマーク。守備では208cmのアレンとマッチアップしても簡単にインサイドアタックを許さないなど、攻守で際立っていた。

「ムーン、クリスがケガをしてすごく厳しい戦いになると予想していましたが、こうやって勝つことができたのは大きいです。明日も主力選手がいないことを言い訳にせず、今日みたいに戦っていけたらと思います」

こう試合を振り返る原は、自己最多の得点について「気づいたら更新していた感じです」と語り、周囲のサポートに感謝する。「ムーンがいない分、パスをシェアしていて、その流れで僕も多くシュートを打つことができました。ゾーンに入っていたというより、チームメートが流れを作ってくれたおかげで、たくさんシュートが打てた結果の記録だと思います」

この試合では原がボール運びを行い、プレーコールを行う場面も目立った。この点については、次のような意図があると明かす。「富樫がビッグゲームで本当に乗っている時は任せっきりでもいいですが、今はシーズン中で、チームとしてステップアップしていくためには、X(クックス)や僕から始まるオフェンスをやっていけたらと思っています。これは(西村)文男と話していく中で生まれたもので、文男がいない時は僕が運んでコールプレーをすることを意識しています」

また、これから自身がより積極的にオフェンスに絡んでいきたいと、中心選手としての強い自覚を見せる。「今まで任せっきりにした部分もありますが、天皇杯が終わった辺りから自分でエントリーして、オフェンスを作ろうという意識が増しています。それが今日はうまくいきました。波があるので、毎試合これくらいの活躍ができるようにしていきたいです」

水曜ゲームで宇都宮に大敗したが、ムーニー不在の中での川崎相手の快勝と、天皇杯での圧勝も含め、ここに来てチーム力は確実に底上げされている。原も「去年からメンバーも変わった中で、特に聡理、(小川)麻斗、(金近)廉といった若手も本来の実力を発揮してきてくれるなど、チームとしてステップアップできています。まだまだ課題はありますけど、強くなっている印象はあります」と手応えを語る。

そして、原個人も手術による離脱を経て、徐々にコンディションが安定してきていると好感触を得ている。「休んでいた分のブランクを取り戻しつつあります。手術をしたことで今シーズンはよりコンディションの波を感じていたのが、徐々に少なくなって、常に動けるようになりました。楽しみながら過密日程を戦って、チャンピオンシップに出られるようにしていきたいです」

最後に原は、パトリックヘッドコーチと同じく、速さと創造性で高さの不利を上回る自分たちのスタイルに「手応えはあります」と自信を見せた。「大きい相手にディフェンス、リバウンドで勝たなくてもいいですけど、僅差にすることができればこちらの方が有利だと思っています」

当然だが、ムーニー、スミスの離脱は大きなマイナスだ。しかし、千葉Jには、個々のステップアップに加え、この苦境を乗り越えられるリーグ屈指の成熟した組織力がある。