「集中力とエネルギーを欠いたとしか言いようがない」
セブンティシクサーズは現地3月24日、クリッパーズ相手に121-107の完勝を収めた。これはチームとして、ジョエル・エンビードが戦線離脱した1月末以降のベストパフォーマンスかもしれない。そしてシーズン序盤に周囲を散々に振り回して退団したジェームズ・ハーデンを打ちのめす勝利でもあった。
昨年オフに契約延長を巡って古い馴染みであるダリル・モーリー球団社長と衝突したハーデンがトレードを要求したことで、シクサーズのプランは台無しになった。それでもチームはエンビードとタイリース・マクシーを軸に勝ち星を重ねていく。一方でクリッパーズは予期していなかったハーデン獲得によりロールプレーヤーを一挙放出し、攻守のバランスが崩れて絶不調に陥った。ただ、その後はハーデンの移籍がクリッパーズにはプラス、シクサーズにはマイナスの影響を与えていく。ハーデンがフィットした後のクリッパーズが立ち直ったのに対し、シクサーズはエンビード離脱後に『タレント不足』を露呈して順位を下げていった。
ハーデンにとっては退団して初めてとなるシクサーズ戦。この試合がフィラデルフィアで行われていたら、愛憎の感情が激しいシクサーズのファンのブーイングを浴びる羽目になっただろうが、これはクリッパーズのホームゲーム。選手やスタッフは『NBAのビジネス』を理解しており、遺恨の感情はない。クリッパーズのタロン・ルーは「もう随分前のことに感じる。シーズンは長いからね」とコメントしている。「フィリーで何が起きたのか、私にはよく分からない。私はただ、ハーデンがクリッパーズでどうプレーしてくれるかだけを考えたい」
シクサーズの選手たちはリベンジよりも、単に良いプレーで勝つことを求めていた。直近の10試合で7敗を喫し、順位をずるずると落としており、どこかで立て直す必要があった。マクシーとトバイアス・ハリスがともに24得点でオフェンスを引っ張り、バディ・ヒールドもモー・バンバも先発抜擢に応えた。さらにシックスマンのキャメロン・ペインがシーズンハイの23得点とインパクトを残している。
クリッパーズは一度もリードを奪うことなく完敗を喫した。第2クォーター終盤に12-0のランはあったものの、良い時間帯を継続できずに逆転には至らず。ハーデンが14アシストを記録したものの得点は12と伸びず、カワイ・レナードもポール・ジョージもいつものエネルギーを欠いているように見えた。カワイは「序盤に相手の勢いに押され、そのままやられてしまった。どうしてこうなってしまったのか分からない。集中力とエネルギーを欠いたとしか言いようがない」と語る。そしてハーデンは、試合後のメディア対応を行わなかった。
レギュラーシーズンも終盤戦を迎え、体力だけでなくメンタルのスタミナも問われる時期に入った。クリッパーズのエンジンがかからず、本来のパフォーマンスを出せないまま敗れたのは、良いプレーをするために必要な気持ちの張りを失っていたのかもしれない。次はペイサーズ戦、その次はフィラデルフィアでのシクサーズ戦となる。おそらくハーデンは盛大なブーイングの中でプレーする。今のクリッパーズは、その手の刺激があったほうが実力を発揮できるかもしれない。