ブランドン・イングラム

アメリカ代表でのプレーで攻守のバランス感覚が向上

ペリカンズのブランドン・イングラムは現地3月21日のマジック戦で膝を痛めた。ジェイレン・サッグスのドライブを身体で止めに行った際の接触でバランスを崩し、コートに倒れる前に左膝に全体重が圧し掛かる形に。痛みに悶絶する彼は一人では歩くことができず、仲間に両脇を抱えられてロッカールームへと戻った。

ヘッドコーチのウィリー・グリーンは、試合後の会見で、「ブランドンが倒れて痛がっているのを見るのは本当につらい。これからMRI検査をするが、良い知らせが届くよう祈っているよ」と語った。

ケガをした場面の映像では大ケガの危険を感じさせたが、MRI検査の結果は骨挫傷で手術の必要はなく、2週間後に再検査を受けることになる。ペリカンズは42勝27敗で西カンファレンスの4位から8位を争う混戦の中にいて、大事なシーズン終盤にイングラムが10試合前後の欠場となるのは痛手だが、シーズン終了という最悪の事態は避けられた。何位でシーズンを終えるにせよ、彼はレギュラーシーズン終盤の数試合をプレーして試合勘を取り戻し、プレーオフを迎えられる。

イングラムはキャリア8年目の今シーズン、20.9得点、5.1リバウンド、5.8アシストを記録。得点はキャリアハイである昨シーズンの24.7から落としているものの、これはペリカンズの戦力が充実したことで彼が無理に攻撃を仕掛ける必要が減り、プレーメークに重心を置いている結果だ。またウイングスパンを生かしたディフェンスも格段に向上しており、チームへの貢献はこれまで以上に高くなっている。ケガに苦しむザイオン・ウイリアムソンも今シーズンすでに58試合出場とコンスタントにプレーできていることも大きいが、イングラムの攻守に渡る活躍も西カンファレンスの上位争いを演じるペリカンズには欠かせない。

イングラムは今シーズンに懸けている。深部静脈血栓症という難病を乗り越えて復活し、MIP賞を受賞したのは2019-20シーズンのこと。その後もペリカンズの主力として活躍し続けてはいるが、チームとしても彼個人も大きなブレイクスルーがなく時間ばかりが過ぎていた。昨シーズンは絶好調のパフォーマンスを見せるもプレーイン・トーナメント止まり。その後にアメリカ代表に合流した彼は、これまで以上にチームプレーに重点を置くようになった。

ペリカンズではザイオンとCJ・マッカラムとの『ビッグ3』だが、アメリカ代表は全く違う環境となる。そこで彼は突出したスタッツを残さなくても、その時その時でチームが必要とするプレーを実践するバランスの良さを追求した。「代表ではスコアラーではなくパスやディフェンスを優先する場面が増えるだろう。それが何であれ、チームが必要としているものを見付け出し、アジャストできる選手になりたい」と彼は語っている。

その成果はチームUSAよりむしろペリカンズで出たと言えるだろう。先の言葉通りのパフォーマンスが今シーズンにはできている。そしてパワフルではあるが安定感を欠いていたペリカンズは、攻守にバランスの取れたチームになりつつある。その充実したシーズンがケガで終わらずに済んだことに彼自身も安堵しているに違いない。

そしてもう一つ、彼には目標がある。契約が残り1年となった今、良い条件を勝ち取るにはオールNBA入りが必要になる。彼はペリカンズで長くプレーしたいと考えているが、昨年オフの時点での契約延長は見送った。代表活動で休みなく戦い続けてきた彼にとって、ここでの小休止は心身ともに必要だったのかもしれない。オールNBAに選ばれ、プレーオフで結果を出せるプレーヤーへと飛躍すること。ケガを治した後、今シーズンの仕事の総仕上げとなる。