文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

JB欠場で「控えめ」から「アグレッシブ」に意識が変化

名古屋ダイヤモンドドルフィンズは1月28日に行われた川崎ブレイブサンダース戦で、ジャスティン・バーレルが負傷し戦線を離脱。リーグ5位の1試合平均18.1得点を記録し、名古屋を牽引していたエースの欠場は大きな痛手となった。

だがこの苦境が一人の選手を成長させるきっかけともなった。それはBリーグで最も身長が高い218cmのジョーダン・バチンスキーの躍進だ。

昨日行われた東地区1位のアルバルク東京との第2戦、今シーズン最長の32分間のプレータイムを得たバチンスキーは、チームを延長に導く同点シュートを含め14得点12リバウンド5ブロックを記録し、勝利の立役者となった。ちなみにリバウンド、ブロックともにシーズンハイの数字である。

バチンスキーは「気持ち良かった。今日の役割はいつもと違ったけど、その役目を果たして勝利をモノにできた」と、自らのパフォーマンスに満足気な笑顔を見せた。

東地区1位のA東京を相手にこれだけのパフォーマンスができた理由は『積極性』と分析する。「名古屋にはバーレルという素晴らしい選手がいる。彼がケガをするまではいつも控えめだったけど、彼の分までアグレッシブにやらなければいけなかった。ディフェンスも得点も、リバウンドも取らなければいけないということで、いつも以上にやらなければと思っていた」

先発選手の故障はチームからすれば痛手でしかないが、ベンチメンバーにとってはプレータイムの獲得でありチャンスでもある。選手にとって先発でプレーすることは一つの目標であり、出場時間を増やしたいと思うのが当然だ。だがバチンスキーは『チームファースト』の姿勢を崩さない。

「このチャンスをモノにしなければいけない、ここから上がっていかなきゃいけない、と思う選手はたくさんいるけど、私は自分のことをよく分かっているつもりだ。考えすぎることなく、今やらなければいけないことを果たそうと思っている」

『チームファースト』の姿勢はプレーでも感じられる。献身的に何度もスクリーンをかけにいき、数字に現れない部分でハードワークをこなした。それでもまだ「アグレッシブさが足りない」と課題を口にする。「もっとアグレッシブにボールを求めなければ。そして、リバウンドとブロックショットを継続することも。自分にはできると信じているので、それを発揮したい」

「一生懸命成長しようとするこのチームを誇りに思う」

リーグは後半に突入し、プレーオフを視野に入れた戦いが始まった。名古屋Dは西地区2位でプレーオフ圏内に位置しているが、首位のシーホース三河とは6ゲーム差とその背中はまだ遠く、大阪エヴェッサと京都ハンナリーズには、3ゲーム差と迫られており、予断を許さない状況だ。

それでもバチンスキーに余計な気負いはない。「あまり先のことを考えずに、1試合1試合を大事に戦うことが大切。プレーオフに行かなければいけないと気負うのではなく、目の前の試合でどう勝つかを考えるだけだ」

そう語るバチンスキーに、油断や慢心は一切見られない。「一生懸命成長しようとする姿勢で練習に取り組んでいるこのチームを誇りに思う。毎試合上達していかなければいけません」

そして、プレータイムが増えたことで実践の中での学びが増えたと充実した表情を浮かべた。「日本のバスケットスタイルは初めてなので、まだ完全に慣れてはいない。練習でも学べますが、試合が一番成長できる。これからも様々なプレーをどんどん試していきたい」

ヘッドコーチのレジー・ゲーリーは延長の末Aに東京に勝利した5日の試合後、「バーレルが戻ってきた時にチームは一段と強くなる」と語った。この発言の裏にはバチンスキーの台頭の意味も含まれていることだろう。彼を筆頭に、このバーレル不在という『ピンチ』を『チャンス』に変えて、ベンチメンバーの底上げが実現できれば、その先に優勝という2文字が見えてくる。