文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

土壇場でバチンスキーの『高さ』が威力を発揮

名古屋ダイヤモンドドルフィンズとアルバルク東京の第2戦。昨日の第1戦ではディアンテ・ギャレットを止められずに接戦を落とした名古屋Dが、今日の試合では延長の末に競り勝った。

オン・ザ・コート数は昨日と同様に名古屋Dが「1-2-1-2」、A東京が「2-1-1-2」。前半に生じたこのズレを有効に使った名古屋Dが先行する。

先発出場の経験が浅いアンドリュー・ネイミックが開始わずか3分半で2つ目のファウルを犯してベンチへ退くと、高さのミスマッチがほぼなくなった名古屋Dが得意のハーフコートバスケットで得点を重ねる。

第2クォーターに入って、オン・ザ・コート数が「2」の名古屋Dは218cmのジョーダン・バチンスキーを投入し高さのアドバンテージを生かした。バチンスキーはオフェンスでは7得点を挙げ、ネイミックから3つ目のファウルを獲得。ディフェンスでもブロックショットを決めるなどペイントエリアで存在感を発揮した。

39-35と名古屋Dがわずかにリードして第3クォーターを迎えるも、ギャレットの1on1を止めることができず、このクォーターだけで8得点を奪われ逆転を許す。第4クォーターは互いに高い集中力を保ったハイレベルな攻防が続く。石崎巧が3ポイントシュートを決めてリードを広げれば、菊地祥平に一瞬の隙を突かれレイアップを決められるなど一進一退の攻防が続く。

だが残り1分4秒、田中大貴に3ポイントシュートを決められ、なおも田中の激しいプレッシャーによりボールを奪われ、竹内譲次に速攻を決められて土壇場で67-69と逆転を許す。それでもこの土壇場でバチンスキーが大仕事をやってのける。残り10秒を切り、張本天傑のドライビングレイアップが外れるも、バチンスキーがオフェンスリバウンドをもぎ取り、そのままゴール下のシュートをねじ込み69-69の同点とし、試合は延長戦へと突入した。

ギャレットのテクニカルファウルが致命傷に

75-77と名古屋Dが2点のビハインドを背負う状況で、延長戦の残り時間が1分を切る。笹山貴哉が3ポイントシュートを狙いこれが外れるも、オフェンスリバウンドをジェロウム・ティルマンが押さえ、すぐさま思い切り良く3ポイントシュートを沈め、78-77と逆転に成功する。

この時点で残り時間は27秒。そして、勝敗を決した出来事はここで起きていた。リバウンド争いの中で、転倒した石崎に巻き込まれる形でギャレットが右足を痛めてコートに倒れ込んでいた。ギャレットが戻れないことでオープンになったティルマンが3ポイントシュートを決めたわけだが、この得点とは関係ない場所でギャレットがテクニカルファウルを取られたのだ。

理由はスポンサーボードを倒したこと。イライラが募った結果なのか、それとも単なる不可抗力なのかは分からない。だが逆転された上にフリースロー1本とポゼッションを渡したことが致命傷となり、A東京は77-81で接戦を落としている。

そのギャレットは22得点を挙げたが、第4クォーター残り8分を切ったところで決めたシュートを最後に、それ以降のシュートをすべて外している。それによってフラストレーションが溜まり、最後のテクニカルファウルを生んだ要因となったのかもしれない。

敗れたA東京の伊藤拓摩ヘッドコーチは僅差での敗北に「敗因はビデオを見ないと分からないです」とコメント。それはチームのパフォーマンス自体が素晴らしかったからだ。「第4クォーターに限っては今シーズンで一番良かったぐらいの集中力でした。第4クォーター途中からコーチする必要がないなと思うくらい、自分たちで話して、集中してバスケットをしていました」

勝負を分けた3ポイントシュートを決められた場面も、選手たちはやれることをやっていたと説明。「すごくいいディフェンスでシュートを落とさせて、リバウンドも全員で入って。ただ落ちたのが相手に有利な方向で、最後にティルマンに決められてしまった」

総力戦で延長戦を制した名古屋D、今後に向け大きな一勝

勝負どころで大仕事をやってのけたバチンスキーは14得点12リバウンド5ブロックの活躍。特に高さを生かしたペイントエリアの守備でA東京に外のシュートを多く打たせ、バーレル不在の穴をしっかりと埋めた。

名古屋Dにとっては前日の敗因がギャレットに気分良くプレーされて得点を奪われたことだっただけに、その翌日にしっかりアジャストできたことが勝因となった。ヘッドコーチのレジー・ゲーリーはギャレット対策について「今日はもっとアグレッシブに、楽に打たれないようにと指示しました。3ポイントシュートを減らそうと激しく付いた結果、うまくいったと思います」と語る。

試合全体については「スターターもよくやってくれましたが、ベンチから出場した選手もすごく貢献してくれた」と全員バスケでの総力戦で延長戦を制したことを強調した。

ジャスティン・バーレル不在の状況で、敵地で強豪相手に1勝を挙げたことは大きい。ゲーリーコーチは「バーレルがいない中、誰がアタックするか、誰を使うかを探している途中です。これでバーレル選手が戻ってきた時にチームは一段と強くなると思います」と語る。

バイウィークを挟み、次節はホームに千葉ジェッツを迎える。強豪との対戦が続くが、今日の勝利は今後の戦いに向けた光明と言えそうだ。