セルティックス戦のクラッチタイムにダンク連発
セルティックスはすでに48勝を挙げて東西カンファレンスでぶっちぎりの首位にある。しかし『王者』の肩書きを保持するのはナゲッツであり、現地3月7日の直接対決では、終盤の勝負どころでその肩書きの強みが示される形で、ナゲッツが115-109で勝利した。
セルティックスの調子が悪かったわけではない。試合を通じて攻守のプレー強度は高く、ジェイレン・ブラウンはシュートタッチが好調で41得点を挙げた。だがナゲッツも互角に渡り合い、勝負どころのしたたかさ、力強さで上回った。
ニコラ・ヨキッチは3ポイントシュートを1本も打つことなく32得点を挙げ、さらに12リバウンド11アシストで今シーズン20回目のトリプル・ダブルを記録した。ヨキッチとのピック&ロールでチャンスを作り出すジャマール・マレーは19得点8アシスト、そしてアーロン・ゴードンが16得点9リバウンド。ケンテイビアス・コールドウェル・ポープはジェイソン・テイタムを抑え込み、自身は11得点を記録。弱点とされるセカンドユニットでもペイトン・ワトソンやクリスチャン・ブラウンなど5選手がそれぞれ自分の役割を果たし、全員が得失点差をプラスで終えている。
中でも強烈なインパクトを残したのがアーロン・ゴードンだ。かつてマジックのエースだった頃の彼は、勝てないチームでダンカーとして名を知られていた。2016年のダンクコンテストでゴードンとザック・ラビーンが50点満点を連発したダンクショーは、今もなおファンの記憶に残る。翌年のダンクコンテストでは奇をてらったドローンを使ったダンクでファンの期待を裏切り、年齢を重ねるとともにダンクマシーンとしての印象は薄まるかと思われたが、ナゲッツに加わって4シーズン目を戦う今、ヨキッチとの阿吽の呼吸により『エア・ゴードン』は華麗なる復活を遂げた。
タイトルマッチの雰囲気をまとったNBAファイナル前哨戦で、ゴードンはダンクを決めまくった。彼が決めた8本のフィールドゴールのうち7本がダンク。しかも第4クォーター残り約5分のクラッチタイムに4本のダンクを叩き込んでいる。彼のダンクは『魅せるためのもの』から『真剣勝負の場で使える武器』へと変貌を遂げた。
その極めつけは残り2分に決めたもの。ヨキッチがクリスタプス・ポルジンギスを背中で押し込み、ターンアラウンドで放ったシュートは、ヘルプに寄ったブラウンの圧力もありリムに弾かれた。だが次の瞬間、オフェンスリバウンドを狙って跳んだゴードンが右手でボールを鷲掴みにすると、そのままウインドミルでダンクを叩き込んだ。デンバーの観客からベンチまで総立ちとなる強烈な一発だった。
「できることなら、すべてのシュートをダンクで決めたいよ」と語るゴードンは、このダンクをこう振り返る。「適切なタイミングで、適切な場所にいることができた。ジョーカー(ヨキッチ)は僕がリバウンドを狙っていることに気付いていたと思う。リムにボールを乗せてくれれば十分だ」
ヨキッチからゴードンへのアリウープは2人のお気に入りのプレーだ。「クラッチタイムにビッグマン同士でロブを上げるなんて常識外れだけど、それはヨキッチが最高のパサーであることを証明している」とゴードンが言えば、ヨキッチは「AG(ゴードン)にボールを渡せば、ほとんどの場合はダンクを決めてくれる。もし彼がダンクを失敗したら、それは僕のパスがマズかったということさ」と信頼を語る。
マレーとヨキッチのピック&ロールを止めること自体が至難の業で、ヨキッチはリーグ最強クラスのミドルレンジのシュート精度を誇る。守備側はヨキッチとマレーを見るのに精一杯でゴードンまで意識に入れていられない。そこで生まれたスペースにゴードンは飛び込み、そこにヨキッチは絶妙なタイミングでパスを送る。どんなシュートであれゴール下から放てば同じ2点だが、ゴードンが『エア・ゴードン』となる時、痛快なダンクで会場は盛り上がり、チームは勢いに乗る。それは彼自身とナゲッツに新たな価値をもたらしている。