ベン・シモンズ

完全復活を期したシーズンも15試合の出場に終わる

ベン・シモンズは長い長いケガとの戦いを続けている。残念なことに、その戦いで彼はほとんど勝利を収めていない。現地3月7日、ネッツは腰を痛めている彼が治療を優先して今シーズンはもうプレーしないことを発表した。

シモンズは2021-22シーズン途中にセブンティシクサーズからネッツへとトレードされた。シクサーズではケガだけではなくチームとの関係も悪化して試合に出ておらず、移籍するも戦線復帰を果たせず。2022-23シーズン開幕から復帰を果たし、ケビン・デュラントとカイリー・アービングとともにプレー。シモンズの弱点であるシュート力のなさは2人が補い、2人のためにプレーメークをして、ディフェンスとリバウンドで強みを出せれば、チームとして噛み合うはずだった。ただ、新たなスタイルの完成を待たずして、デュラントもアービングも移籍を選択。それはハーデンが去り、シモンズが来たネッツに良い展望が描けなかったからの『シビアな決断』とも言える。

指揮官との相性もシモンズを苦しめた。スティーブ・ナッシュはシモンズの可能性に常に賭けていたが、彼が更迭されると後任のジャック・ボーンはシモンズの復帰に向けた努力は認めても、どれだけプレーできるか分からないシモンズをチームの軸に据えようとはしなかった。結局、デュラントとアービングが去るとシモンズは腰と膝のリハビリに専念することを決め、後半戦を欠場した。

そして今シーズン開幕を前に、じっくりとケガに向き合い、コンディションを高めた彼は完全復活に自信を持ち、「ファンには借りがある。オールスターだった時の自分を超えるつもりでプレーする」と語っていた。しかし、開幕からわずか2週間で腰の状態が悪くなり戦線離脱。今年1月末に復帰したが、9試合に出場して再び欠場が続いていた。

彼の治療方針はこれから時間をかけて検討するとのことだが、2022年の5月に続いて手術を受ける可能性が高い。そうなれば今年のほとんどをリハビリに費やすことになる。ジャック・ボーンが解任された後に暫定ヘッドコーチを務めるケビン・オーリーは「大変だろうが、彼に寄り添いたい」と話す。「手術が必要かどうか私には分からない。手術するにせよリハビリで何とかするにせよ、彼が健康になり我々の知っているベン・シモンズに戻ってほしいと願うだけだ」

ネッツとシモンズの契約は来シーズンまでで、最終年の年俸は4000万ドル(約60億円)。2019年時点でのシモンズは5年1億7000万ドルの大型契約に見合った逸材だったが、今の彼にその価値はない。ネッツはこの先、彼のバイアウトを検討するだろう。4000万ドルを捨てることになるが、サラリーキャップに空きができれなフリーエージェントのビッグネームを獲得することもできる。彼の復活よりバイアウトがチームにとってプラスになるのであれば、『シビアな判断』が求められる。

その場合、シモンズにNBAでの次のチャンスはないかもしれない。だが、NBAは結果がすべてのリーグであり、『シビアな判断』があちこちで下される世界だ。ミケル・ブリッジズは「ベンのメンタルが心配だ」と語った。「誰だってケガをするのは嫌なものだ。彼はずっとケガと向き合っている。そう考えるとつらいよ。せめて彼がメンタル面で元気であってほしい」