チームのさらなる成長へ「もっと厳しい場面を潜り抜けていかないといけない」

3月2日、3日と宇都宮ブレックスは、ホームでサンロッカーズ渋谷相手に同一カード連勝を達成。今シーズン34勝7敗とし、アルバルク東京を抜いて東地区1位に浮上した。

この2試合、宇都宮は連勝という結果に加え、内容面も充実していた。初戦は前半でわずか25得点とオフェンスが停滞するも、後半にしっかり修正して逆転勝ち。そして2試合目は比江島慎、D.J・ニュービルの2枚看板が揃ってファウルトラブルに陥る中でも終始、主導権を握り続けて勝ち切る総合力の高さを見せた。

3日の試合終了後、宇都宮の佐々宜央ヘッドコーチは、会見で「比江島、ニュービルとうちのポイントゲッター、ハンドラーが揃ってファウルトラブルになり、グラント・ジェレットも欠場という中でのどう戦うかというところは、千葉戦で出た課題でした」と振り返る。

指揮官が指しているのは、千葉ジェッツに敗れた2月14日の天皇杯セミファイナルのことだ。この試合、宇都宮は第1クォーターで24-6と大量リードを奪いながら、ニュービルの不調と比江島のファウルアウトが重なり、72-78と痛恨の逆転負けを喫している。

この敗戦は比江島、ニュービルが本来のリズムでプレーできなかった時、残った選手たちでどうやって苦境を乗り越えていくのかという、宇都宮が頂点に立つために乗り越えないといけない課題を突きつけた。

3日の試合は、2人が揃ってファウルトラブルという困難に直面したが、鵤誠司と高島紳司のステップアップもあり、試合の流れを相手に渡すことなく勝ち切った。佐々ヘッドコーチは、両ガードの貢献度の高さを次のように称える。

「チームとして点数はそんなに伸びていなかったですけど、誠司のアタックは大きかったです。紳司も大事な場面で3ポイントを決め、何よりも(アンソニー)クレモンズ選手へのディフェンスで会場を盛り上げてくれたりとインパクトを残してくれました」

チーム力の底上げに大きな手応えを得た佐々ヘッドコーチだが、「チャンピオンシップなどで負けられない、ミスできない精神状態になった時に、どういうプレーができるのか。そこは経験が大事で、だからこそもっと厳しい場面を潜り抜けていかないといけないです」と、満足することはない。

そして、プレッシャーのかかる場面を経験できる場として、同地区ライバルの千葉J 、A東京との残り試合を楽しみにしている。「天皇杯の千葉戦は本当に大きな財産になると思っています。そして千葉との再戦、アルバルクと地区1位を争う状況でどういうゲームができるかで、チームの真価が問われます。(両チームとの試合を)ある意味待ち望んでいます」

ルカHCの佐々HCへの思い「改めて彼と一緒に素晴らしい日々を過ごせていたと思います」

ちなみに佐々ヘッドコーチにとって、この2試合は個人的にも大きな意味を持っていた。それは、師匠と慕うSR渋谷のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチと久しぶりの対戦だったからだ。2人は、パヴィチェヴィッチヘッドコーチが2016年に日本バスケットボール協会にテクニカルアドバイザーとして加入し、男子代表の指揮を執っていた時、佐々ヘッドコーチがアシスタントとして支えた時からの関係だ。

佐々ヘッドコーチは、次のように師との対戦を語る。「ルカは意識していないと思いますが、ヘッドコーチとしてルカと対戦するのは、彼がアルバルク東京、自分が琉球ゴールデンキングスにいた時の(2019年の)チャンピオンシップセミファイナル以来でした。当時は沖縄アリーナではなく、沖縄市民体育館が会場でした。この対決に僕は特別な感情を抱いていました。相変わらず僕にとっては師匠ですし、ルカを乗り越えていかなければいけない気持ちで、必死に立ち向かっていきました」

佐々ヘッドコーチは「意識していないと思う」と言っていたが、ルカヘッドコーチも愛弟子との対戦に特別な思いで臨んでいたと明かした。

「佐々コーチは私が日本代表のヘッドコーチだった時、深夜になるまで一緒に戦ってくれた仲です。そして現在、彼が再び日本代表のスタッフとなり、トム(ホーバス)ヘッドコーチを支えて、パリ五輪出場など見事な成績を収めている。また今、ブレックスを率いてここまで好成績を残しているのは本当に素晴らしいことです。彼とのいろいろな出来事を振り返ると、やはり対戦には感傷的な気持ちになります。そして、改めて彼と一緒に素晴らしい日々を過ごせていたと思います」

地区首位に立った宇都宮だが、2位のA東京との差はわずか1ゲームだ。そしてレギュラーシーズン終盤となる4月20日、21日にはA東京、翌週の27日、28日には千葉Jと、ポストシーズンに大きな影響を与える4連戦が待ち構えている。そこまでに、どれだけチーム力を高めていけるのか。これからの佐々ヘッドコーチのチーム作りは見逃せない。

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