ドック・リバース

エンビード不在のシクサーズをバックスは寄せ付けず

ドック・リバースは今シーズン途中にエイドリアン・グリフィンの後を継いでバックスのヘッドコーチに就任した。新人コーチの下で30勝13敗だったチームは、指揮官交代から4勝7敗と低調な再スタートを切ったものの、選手たちはドックの采配をポジティブに受け止めている。

ヤニス・アデトクンボはグリフィンについて「彼のことは大好きだったし、一緒に働くのは楽しかった。コーチとしての手腕も優れていたと思う。ただ、彼は1年目で経験がなかった。ドックのような歴戦のコーチと比べることはできない」と語る。デイミアン・リラードは直近の苦戦について「僕らの実力を表すものではなく、変化するための影響だよ。すべてが変わるんだから、しばらく苦戦するのは当然だろう」と言う。

1999年にマジックで初めてヘッドコーチとなったドックは、1年目にコーチ・オブ・ザ・イヤーを受賞。それから現在に至るまで、ほぼ休みなくセルティックス、クリッパーズ、セブンティシクサーズでヘッドコーチを務め続けてきた。最も感覚が空いたのは、マジックを解雇されてセルティックスに来るまでの半年間。ヘッドコーチには多くの役割が求められるが、特にスター選手を使いこなすには経験が必要となる。それがグリフィンとドックの差だ。

現地2月25日にシクサーズvsバックスが行われ、ドックがフィラデルフィアに戻って来た。彼がコートに姿を現すと、フィラデルフィアのファンからブーイングが浴びせられる。彼らにとってドックは、優勝できるポテンシャルを秘めたチームをカンファレンスファイナルにも連れていけなかったコーチだ。それでも彼の率いるバックスは前半で21点のリードを奪い、後半も危なげないプレーでシクサーズに119-98の完勝を収めた。ジョエル・エンビードが膝のケガで戦線離脱している今、シクサーズは本来の力にはほど遠い。ドックが率いていた頃にしばしば陥っていた状況が再現されていた。

シクサーズファンのブーイングにドックは「それは彼ら次第で、私にどうこうできる話じゃない」と言い、シクサーズで過ごした3シーズンをこう振り返った。「全体的には満足しているが、ただもっと上に行きたかった。プレーオフでジョエルが元気にプレーできていれば良かった。チームが優勝できなければハッピーにはなれないが、私はここが大好きだったよ」

ファンはブーイングを浴びせたが、選手たちは今もドックに好感を抱いている。ドック体制でのシクサーズは『ベン・シモンズ問題』に揺れに揺れた時期もあり苦戦したが、エンビードを軸に据えて若手を育て、優勝候補へと引き上げたのは間違いなくドックの功績だ。タイリース・マクシーは「ドックには感謝しかない。ルーキーイヤーに僕に謙虚さを植え付け、今の地位に就けてくれた」と言う。「レギュラーシーズン途中に彼は『君はプレーオフで飛躍する』と言った。その時は出場機会もあまりない頃で、その言葉の意味が理解できなかった。でも彼の言葉を僕は信じた」

選手のポテンシャルを信じて託す。そんなドックによりシックスマンに抜擢された彼は、プレーオフで不振のシモンズに代わりチームの救世主となった。それから3年、彼はオールスターへと成長している。

シクサーズを解雇されたドックは、数か月の充電期間に友人とのゴルフに興じるとともに、自分のコーチとしての成長にフォーカスしていた。「休養のおかげでバスケに対する情熱はまた高まった」とドックは言う。「私はたくさん勝ってきたが、そこではなく上手くいかなかったことに目を向け、どうすれば選手に自分の考えが伝わるかを考え続けていた」

スター選手を使いこなす秘訣を問われたドックは、彼らしい答えを語っている。「スター選手だって必死に努力し、これまで以上の挑戦をしなければ優勝できない。その時にコーチの助けは必要だろう? だから私は選手に責任を負わせる。そうしなければ勝てないことを自分の経験から知っているからだ」

指揮官交代から1か月。順風満帆ではなかったが、ドックはチームを掌握し、良い感覚を得ている。「私はこのチームが好きだ。良いチームになると確信しているよ」