PJ・タッカー

移籍希望を公言したとして7万5000ドルの罰金を科される

PJ・タッカーは苦しい立場に追い込まれている。ジェームズ・ハーデンがエースだった時代のロケッツで活躍した『ディフェンス職人』は、ハーデンを放出して解体に向かったロケッツを離れて2020-21シーズンにバックスへと移籍。ここでエースキラーとして、プレーオフで必要とされる勝負強さを遺憾なく発揮してNBA優勝に大きく貢献した。その後はヒートとセブンティシクサーズでも活躍し、30代半ばからキャリアを大きく飛躍させた。

しかし今シーズンは開幕直後に起きたハーデンのトレードに絡んでシクサーズからクリッパーズに移籍。加入当初は試合に出ていたものの、すぐにローテーションから外れ、わずか12試合に出場しただけで11月下旬から試合に出ていない。彼の役割はアミア・コフィーとルーキーのコービー・ブラウンに引き継がれた。

この時点でタッカーは、より多くの役割とプレータイムを保証するチームへ移籍したいと発言している。そして先日、彼は『The Athletic』に「自分が必要とされるチームへ行きたい。僕が試合に出ていないのはチームと話し合って、トレードが決まるのを待っていたからだ。でも、チームはそうしなかった」と語っている。

クリッパーズは彼のトレードを模索したのだろうが、38歳となった今シーズンは全く結果を出しておらず、来シーズンに1150万ドル(約17億円)の契約を残すタッカーを獲得しようとするチームを見つけるのはそう簡単ではない。こうしてトレードデッドラインは過ぎ去った。来シーズンまで保証されている契約を解除することはタッカー自身が望んでいない。今後、タッカーはクリッパーズのローテーションに再び入ることになるだろうが、それで彼の不満が消えるわけではない。

「僕はプロフェッショナルとして自分の責務を果たそうとするけど、僕が自分の主張をしなかったらどうなる? シーズン途中にチームに加わるのは大変なんだ。バックスへの移籍がそうだったけど、10月から一緒に練習して戦っているチームに溶け込むのは大変だ。チームメートになるということは、絆を築くということ。プレーオフでいきなり起用されて『自分の仕事をしろ』と言われても、それで何とかなるものじゃない」

「トレードを待ってプレーしないのはつらい。僕は優勝を経験した。一昨シーズンはNBAファイナルまであと1勝、昨シーズンはカンファレンスファイナルまであと1勝。もう6年も7年も優勝争いのできるチームでプレーしてきた僕がそんな経験をするのは本当につらいことだ」

クリッパーズはオールスターブレイクを前に最後の試合となるウォリアーズ戦に、タッカーと、彼と同じようにローテ外になっているボーンズ・ハイランドを帯同させなかった。まだ経験が浅く、ハーデン加入で居場所のないハイランドとは違い、タッカーはセンターの控え、相手のエースを抑える役割で出番があるだろう。指揮官タロン・ルーは「誰だってプレーはしたいから、今の状況にフラストレーションを感じるのは当然だ。だが、チャンスが与えられれば問題は解決する。PJについては心配ない」と語っている。ウォリアーズ戦に帯同させなかったのも、気分をリセットしてオールスター明けにチームに戻れるようにとの配慮だそうだ。

NBAはトレードを求める発言をしたことでタッカーに7万5000ドル(約1100万円)の罰金を科した。もっとも、彼にとって大した金額ではない。少々乱暴な形にはなったが、チームとのコミュニケーションが取れて、自分の力を正しくコートで発揮できるようになるのであれば、些細な代償だ。もっとも、今のクリッパーズのセンターはイビツァ・ズバッツ、メイソン・プラムリー、ダニエル・タイスがいて、パワーフォワードは先発のカワイ・レナードに続いてコフィーとブラウンが奮闘している。ここからのタッカーは不平不満を口にするのではなく、コート上でのプレーで自らの居場所を勝ち取っていかなければならない。