ゴードン・ヘイワード

ペリカンズ、レイカーズ、ウォリアーズは動かず

明け方のトレードデッドラインの動きを眠さをこらえながら追っていた日本のNBAファンに飛び込んできたのは渡邊雄太のグリズリーズへのトレードでした。補強を目指したサンズと、ドラフト指名権を求めたネッツ、そしてサラリーを削減したかったグリズリーズという、渡邊と縁のある3チームの思惑が一致した、デッドラインらしいトレードとなりました。

ここまで西カンファレンス5位のサンズは、主力を失うことなくロイス・オニールとデイビッド・ロディーというフィジカルなディフェンダーの補強に成功しました。オフェンスは『ビッグ3』が個人技でどうにかする前提で、ディフェンスを強化する良い補強となりましたが、専門職であるポイントガードとセンターではなく、マルチな役割となるウイングばかりが厚くなったことは起用法を難しくした印象もあります。

逆にティンバーウルブズはウイングを放出し、ポイントガードのモンテ・モリスを獲得しました。今シーズンは開幕からケガによる欠場が続き、復帰して6試合に出場したのみとコンディションに不安がありますが、冷静な状況判断と高確率のフィールドゴールで堅実なバックアップ役になりそうです。ウルブズらしい個人技での突破役としては不向きですが、コンビプレーを促してディフェンスの逆を取るのが上手く、新たなオフェンスバリエーションの構築にも期待したいところです。

大量のドラフト指名権を保持しながら、首位に立っている若きサンダーも主力を放出することなく、ホーネッツからゴードン・ヘイワードを補強しました。ケガの多さは気になるもののポジション概念のないサンダーの戦い方に違和感なくフィットするベテランであり、契約が今シーズン限りのため、リスクを抑えつつ戦力アップを実現しています。プレーオフの経験値に乏しいチームだけに、ヘイワードにはチームを落ち着かせる働きが期待されます。

マーベリックスはグラント・ウィリアムズとセス・カリーを放出し、ホーネッツからPJ・ワシントンを獲得しました。3ポイントシュートの精度には懸念もありますが、ウイングのバージョンアップを狙った補強で、より機動力があり個人での仕掛けも期待できます。ワシントンにとってスターターの座を手に入れることができ、活躍のチャンスが広がるトレードですが、ルカ・ドンチッチの相棒となるウイングには高いレベルのプレーが要求され、長い目で見てフィットするかが試されることになります。

一方でデジャンテ・マレーの獲得に動いていると噂されていた6位ペリカンズと8位レイカーズは動きがないままデッドラインが終わりました。両チームとも直近では9勝6敗と勝ち越していることもあり、動く必要はないと判断したようです。11位のウォリアーズは何かしらの刺激策を探すべきでしたが、こちらも補強がないまま終わっています。

トレードデッドラインは締まったとはいえ、ロスター枠の関係でウェイブされた選手もいれば、カイル・ラウリーを筆頭に市場に出てくると予想される選手もいるため、まだフリーエージェントでの補強の可能性が残されています。西カンファレンスは10チームが勝率5割以上と激しい争いが続いており、わずかな戦力差が最終的な順位に繋がってきかねないだけに、各チームは休む間もなく次の一手へと頭を切り替えなければいけません。