「積み重ねていける強さがこのチームにはある」
2月10日、琉球ゴールデンキングスは、約2週間となるリーグ中断期間前の最後の試合で千葉ジェッツに勝利。リーグ最高勝率の難敵相手の連戦を1勝1敗で終えられたことは、ゴール下の要ジョシュ・スコットの離脱以降、黒星が先行して苦しむチームにとって大きな結果となった。
この勝利の大きな要因となったのが、アイラ・ブラウンの復帰だ。9月に行われたワールドカップ予選Window4に出場した際にケガを負い、その後も痛みを抱えながらプレーを続けてきたブラウンだが、その代償として左膝軟骨損傷により11月24日の横浜ビー・コルセアーズ戦を最後にコートから遠ざかっていた。
「調子は85%から88%」と本人が語るように本調子ではなく、9日は9得点5リバウンド、10日は7得点3リバウンドとスタッツは伸びなかった。しかし、フィジカルの強さを生かしたゴール下のディフェンスで数字には出ない存在感を発揮した。また、ブラウンがいることで外国籍選手の負担を軽減させ、プレータイムを調整できることも有形無形のプラス効果となっている。
「正直、予想より早い時期に復帰できた。(1月30日の)京都戦、もしくは(2月2日、3日の)新潟戦に復帰できたかもしれないけど、そこはチームの判断を尊重した。今回の千葉戦を自分、チームとして復帰への大きなターゲットとしていた」
復帰への経緯をこう語るブラウンは、千葉相手への1勝を弾みとし、終盤戦での反攻に自信を見せる。「今日の勝利をとてもポジティブにとらえている。もちろん連勝するのがベストだったけど、この試合の前まで4連敗している中で、リーグトップの千葉を相手にカムバックして勝てたのは大きい。負けがこんでいたが、この勝利によってプラスの流れに変えられる。僕とジョシュのケガは不幸な出来事だったけど、積み重ねていける強さがこのチームにはある」
「苛立ちをモチベーションに変えてリハビリに取り組んだ」
ちなみにブラウンにとってここまで長い期間、戦列を離れたことはキャリアを通してこれまでなかった。さらに手術を受けることも人生で初めてだった。だからこそ欠場期間中は「かなりフラストレーションが溜まった」と言う。
「これだけ長い間、試合に出られずチームメートのサポートができないのは苦しかった。ただ、この苛立ちをモチベーションに変えてリハビリに取り組んだ。医師から復帰まで3カ月と言われたのを2カ月に縮めるためのエネルギーとしたよ」と、鬱憤を早期復帰へのモチベーションに変え、千葉との大一番に間に合わせた。
今回の復帰にあたって印象に残っている光景がある。9日の試合前、ウォーミングアップにブラウンがコートに姿を見せると、それに気づいたファンからの歓声が上がり、すぐに会場全体から大きな拍手が沸き起こったのだ。
これがブラウンを感激させたのは間違いない。「言葉で表現できないうれしい気持ちだった。沖縄の皆さんが自分をたくさんサポートしてくれ、多くの愛情を受けていると感じられた素晴らしい瞬間だった」と彼は語る。
残り20試合、琉球が勝ち星を増やしていくためには、シーズン序盤のような攻守に渡る強度の高いプレーを取り戻し、それを発展させていくことが重要な要素となる。そのためには、ブラウンの活躍が欠かせない。新しいメンバーでの最適解を探し出すための大事な中断期間前に彼が復帰し、フルメンバーで練習を積めることは琉球にとって本当に大きな意味を持つに違いない。
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