アドリアン・グリフィン

アデトクンボの憤慨「僕らの戦略は?」

バックスは今シーズンにヘッドコーチ就任したばかりのアドリアン・グリフィンを解任した。ここまでチームは30勝13敗で東カンファレンス2位と、成績が悪かったわけではない。それでもチームの不協和音は漏れ出していた。

ヤニス・アデトクンボを中心に3年前のNBA優勝チームのコアメンバーをいまだ残すバックスは、勝利を義務付けられたチームだ。それでも優勝コーチのマイク・ブーデンフォルツァーからの指揮官交代に踏み切ったのは、長期政権によるマンネリ化を打破するためだった。そこで抜擢されたのが、ラプターズでアシスタントコーチを務めていたグリフィンだった。ブーデンホルザーのバスケはハードワークを前面に押し出す堅実なスタイルだったが、より洗練されたラプターズの戦術を採り入れ、ヘッドコーチ初挑戦でも若くて情熱のあるグリフィンの可能性に賭ける選択だった。

しかし、最初の綻びは開幕前に見られた。グリフィンの経験不足を補うために雇われたテリー・ストッツがグリフィンと衝突してアシスタントコーチを辞任。トレイルブレイザーズでストッツと長く一緒に戦ったデイミアン・リラードは、バックスに加入してすぐに最も頼りになるスタッフを失うこととなった。

そして、アデトクンボもグリフィンを信用しようとはしなかった。ブーデンフォルツァーを解任するフロントの判断を疑問視していたことが、オフの「20年も同じチームにいて一度きりしか優勝できないのは嫌だ」という発言に繋がっている。彼は開幕前に契約延長に応じたものの、グリフィンが『勝てるコーチ』かどうかを慎重に観察することは止めなかった。

年明けからバックスは5試合で4敗を喫したが、そのうちの一つ、ロケッツ戦の敗戦後にアデトクンボは怒りをぶちまけている。「僕らのディフェンスにはプランがない。オープンスリーを許容するのか、ペイントエリアへの侵入を許すのか、相手がポストに入って来た時にどうするのか。僕らの戦略は?」

バックスのフロントは、勝敗よりもアデトクンボを始めとする選手たちとの信頼関係を築けていないことを問題視し、グリフィンが経験を積んで成熟するのを待つというプランを放棄した。ジョン・ホーストGMはグリフィン解任のリリースの中で「シーズン中に下すのは非常に難しい決断だった。新たなコーチの採用を急ぎ取り組んでいる」とコメントしている。

後任の最有力候補は昨シーズンまでセブンティシクサーズを率いたドック・リバースで、ヘッドコーチとしてNBA歴代勝利数9位となる1096勝を挙げた実績の持ち主。グリフィンとは対照的に最新の戦術を駆使するわけではないが、ベテランのモチベーションをコントロールし、それぞれの個性を上手く発揮させる指揮官で、今のバックスの状況にはフィットしそうだ。続く候補は昨夏にもバックスの指揮官候補に名前が挙がったケニー・アトキンソンと見られている。