大学時代、恩塚HCの下で4年間プレー「言っていること、やりたいことの理解は早くできているのかなと」
パリ五輪最終予選(OQT)に向けた女子日本代表の合宿が始まった。恩塚亨ヘッドコーチ体制後、今回の合宿が初めての代表参加となるのは4人。その内の1人がデンソーアイリスの司令塔である木村亜美だ。
同じ新顔組で日本代表の経験豊富な吉田亜沙美と馬瓜エブリン、ウインターカップでの大活躍が記憶に新しい絈野夏海(岐阜女子高)と比べると、彼女の知名度は劣るかもしれない。だが、今シーズンの木村は司令塔としてWリーグ屈指のハイパフォーマンスを続けてきた。テンポ良くパスを散らして、コートに立つ全員をオフェンスに絡ませる非凡なゲームメークに加え、今シーズンはシュートの精度が大幅に向上し、Wリーグでここまで3ポイントシュート成功率40%以上を記録。また、皇后杯では決勝で3ポイントシュート6本中4本成功の16得点4アシストの大活躍だった。
木村は北九州市立折尾中時代には全国中学校大会で日本一に輝き、高校では名門の東京成徳大高に進学。そして東京医療保健大学でも上級生になると中心選手を務め、4年生の時にはキャプテンとして2021年インカレでMVPを受賞する活躍で優勝の原動力となった。そして、大学卒業後はデンソーに加入すると、ルーキー時から不動の先発ポイントガードを務めている。
このように見事な経歴を誇る木村だが、「これまで日本代表を意識したことはなかったです」と明かす。今回の合宿招集についても「素直にびっくりしました。コートで自分の役割を精一杯やって貢献できたらと思います」と控えめに語る。
一方で恩塚ヘッドコーチとは東京医療で4年間師弟関係にあり、指揮官のやりたいバスケットボールの習得については手応えもある。「新しいシステムを理解するのは難しいです。ただ、恩塚さんには4年間、大学で指導していただいたので言っていること、やりたいことの理解は早くできているのかなと思います」
あこがれの吉田「追いつけるように見て、学んで盗んでいきたいです」
また、木村にとってはもう1人、今回の代表合宿には恩師がいる。それはチーム最年長の吉田だ。昨年秋に2度目の現役復帰を果たす前、吉田は東京医療でアシスタントコーチを務めていた時期があり、ちょうど木村の在学期間とかぶっていた。また、吉田は高校の先輩でもある。ずっとあこがれの存在であるレジェンドと、同じ選手として一緒に切磋琢磨できることに笑顔を見せる。
「アシスタントコーチをしてもらっていた時から、尊敬する部分がたくさんあります。リュウ(吉田)さんみたいにプレーしたいと思っているので、一緒にプレーできるのはすごくうれしいです。一緒にやっていて、間近で見てパスのタイミング、狙い目とか本当に学ぶところが多いと感じます。追いつけるように見て、学んで盗んでいきたいです」
これまで日本代表のことを意識していなかった木村だけに、今回の合宿参加を経ても「目の前のことを一つひとつ積み上げていくことが大事。先というより、本当に目の前のことに集中しています」と、OQTの先にあるオリンピック出場まで思いを馳せることはなく、激しいポジション争いを勝ち抜くことだけにフォーカスしている。今回の合宿参加メンバーをポジション別に見ると、ポイントガードが最も人数が多い。その中で、木村はこのように意気込みを語る。
「周りのポイントガードとタイプは違うので、自分にしかできないところを探して、生かしていけたらと思います。私はアタックして自分でシュートというより、ボールを散らしてシュートを打ってもらうのが持ち味です。そこを武器に頑張っていきたいです」
ここまで恩塚体制の司令塔と言えば山本麻衣、宮崎早織と、どちらかといえばスコアリングガードの選手たちが起用されている。だからこそ、2人と真逆のタイプである木村は、日本代表にこれまでと違ったリズムをもたらし、相手を困惑させることができる。恩塚HCの秘蔵っ子として、木村がOQTの舞台、ハンガリーのコートに立つ可能性は十分にあるはずだ。