吉井裕鷹

「いつでもDNPになるという気持ちでやっている」

アルバルク東京は川崎ブレイブサンダースとの第1戦に94-79で勝利し、リーグ最高勝率をキープしている。

試合結果だけを見ればA東京の完勝のように映るが、セカンドチャンスポイントで圧倒しながらも、アルトゥーラス・グダイティスのブザービーターが決まって68-66で第3クォーターを終えたように試合内容はやや劣勢だった。それでも、ギアを入れ替えたA東京は最終クォーター序盤から川崎を圧倒。強固な守備でタフショットを打たせ続けると、セカンドチャンスから橋本竜馬の3ポイントシュートが決まり、吉井裕鷹もコーナースリーを射抜く。さらに吉井がオフェンスファウルをファウルを誘発した直後には、ゲームハイの28得点を挙げたセバスチャン・サイズが3ポイントシュートを成功させ、約3分半で11-0のランで突き放し、一気に試合を決定付けた。

吉井はビッグランの際に3ポイントシュートを決め、ポゼッションをもたらすオフェンスファウルを獲得し、第3クォーター終盤にはロスコ・アレンをブロックするなど、要所での活躍が目立った。それでも、プレータイムは12分弱でフィールドゴール試投数は1本のみ。日本代表での活躍を考えれば、もっと出場機会が与えられてもいいと思われるが、26試合を終えた時点での平均出場時間は11.07分と、チーム内での序列は決して高くない。

吉井はそんな現実を正面から受け止め「いつでもDNP(ベンチ入りするも出場ナシ)になるという気持ちでやっている」と言い、強い精神力でこの苦境に立ち向かっている。

「選手として試合に出る、出ないで心を揺さぶられるのは結構しんどいので、試合に出た時に全力を出すためにどうしたらいいのかを常に考え続けています。プロの世界は技術うんぬんより、心がずば抜けて大事だと思っていて、誰かに感化されないと維持できないのは1番良くないので、セルフで維持し続けることを意識しています」

吉井裕鷹

「今必要なことを常にやり続けることが大事」

そして、吉井にとっては、試合の大勢が決まった後のわずかな時間さえも、自身をアピールする大切な時間と考えている。「ガベージタイムがあるかないかというのも僕の中では重要です。監督によっては、信頼がないと出さない選択もあると思いますし、ウチの監督は引き締め続けたいという感じが強いです。試合の最後なので嫌な雰囲気で終わらせたくないという意味で、出れなくても準備しますし、周りを支えるという気持ちでみんなもやっていると思います」

短い出場時間の中で大きなインパクトを残すことは決して簡単ではない。単発ではなく、それをコンスタントに続けていくことはなおさらだ。また、A東京の場合はオフェンスよりもディフェンスでのパフォーマンスが重要視されるため、継続性がさらに求められる。近道がないことを分かっている吉井は「今必要なことを常にやり続けることが大事」と強調する。

「出場時間を伸ばしたいと、気合が入り過ぎてしまい空回りしてしまうこともあるので、そこは冷静に、コンスタントに同じことをやり続けられるように意識しています。ウチは得点じゃなく、ディフェンスでコーチたちが求めることをやり続けられれば試合に出れます。でもその基準がめちゃくちゃ高いので、難しい部分はあります。スポットアップで3ポイントをしっかり決めることと、ディフェンスで要求されることをミスしないこと。それが出場時間が延びていく秘訣だと思っています」

前述の通り、吉井は大事な場面でスポットスリーを決め、ディフェンスでも一定の結果を残し、プレータイム増加に直結するパフォーマンスを見せた。今後も同じようなプレーを披露できれば、自ずと吉井の序列は上がっていく。