佐藤HC「もっと全員で攻める形を追求していけば、自然とリズムは良くなります」
12月30日、川崎ブレイブサンダースはホームで名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦。40分間を通して強度の高いディフェンスを継続し、77-55と快勝した。これで川崎は名古屋Dとの上位対決で同一カード連勝を達成している。
試合の出だしから川崎は、14得点8アシスト4リバウンド3スティールと攻守で大暴れした藤井祐眞を中心に、内外バランスの良いオフェンスで優位に立つ。名古屋Dも須田侑太郎の外角シュート、スコット・エサトンのゴール下の得点などで食らいつき、前半は川崎の6点リードで終える。
だが、後半に入ると名古屋Dはゴール下のシュートを決めきれないなど、オフェンスの精度が落ちる。齋藤拓実と伊藤達哉、2人の司令塔が不在だったことも響き、ハーフコートオフェンスで個に頼る単調なオフェンスが続くことでリズムを崩し、このクォーターだけで8つのターンオーバーを犯した。川崎は相手のミスをイージーシュートに繋げることで、このクォーターで16-6と突き放し、そのまま逃げ切った。
これで川崎は5連敗の後、ファイティングイーグルス名古屋、名古屋D相手の4試合で3勝1敗と勝ち越し2023年を終えた。5連敗を喫した直後、川崎の佐藤賢次ヘッドコーチは「特にディフェンスで質か低くなっています」と不調の原因を挙げていたが、今日は川崎本来の堅守を遂行できた。
指揮官は堅守復活にはオフェンスの終わり方が大きな鍵になると言う。「ディフェンスというよりオフェンスに問題があって、オフェンスがうまくいかないことが影響してディフェンスが悪くなります。それが一番の大きな問題でした。もっと全員で攻める形を追求していけば、自然とリズムは良くなります。いつもディフェンスからと言っていますが、どうしてもオフェンスが悪いと、それをひきずってリズムが悪くなる。その課題が明確なので、ここからどうやって成長していくのか選手と考えてやっていきたいです」
また、佐藤ヘッドコーチは、「名古屋Dさんはディフェンスで的を絞るというより、自分たちのスタイルを貫くチームです。我々が苦しむのは、的を絞られてスイッチされることで、ボールが動かなくなってしまう時です。そうなった時にボールを動かせるのかを考えると、まだまだ安堵感はないです」と、真価が問われるのはこれからと気を引き締めている。
今までと異なる役割を任されたアレン「より多くの方法でチームに貢献していくだけ」
川崎のオフェンスの終わり方が悪くなる典型的なパターンは、藤井とニック・ファジーカスによるツーメンゲームに依存しすぎて単調になる時だ。だからこそ指揮官も「もっと全員で攻める形を追求していければ」と言及する。そんな課題解消の大きなキーマンとなるのが、ロスコ・アレンだ。
208cmのサイズとハンドリング能力を備えるアレンは、ボールプッシュもできトランジションの起点になれる。また、力強いドライブに3ポイントシュートと、多彩なプレーが持ち味のオールラウンダーは、ゴール下の空いたスペースに飛び込みパスを受けてのシュートも得意としている。チームオフェンスが機能することでより輝きを増すタイプの選手であり、アレンが目立っている時は、川崎が全員で攻めることができているケースが多い。そして今日のアレンは、15得点5つのオフェンスリバウンドを含む10リバウンド3アシストと活躍した。
「連敗中は多くのメンタル面でのミスがあったり、間違った方向に進んでしまっていました。しっかり集中して練習をし、必要なアジャストメントができました。今、僕たちは正しい方向に進んでいる。良い変化をしていることは、この2勝が示していると思う」
このようにアレンは、チームの復調に手応えを得ている。そして、5連敗のような失速はもう許されないと強調する。「シーズンの最後に振り返った時、『あの試合でもっと良いプレーをしていれば……』と言いたくはない。5連敗を変えることはできません。この負けを取り返すためにも、これから勝ち続けないといけないということを肝に銘じないといけない」
Bリーグでのプレーは6年目となるアレンだが、これまでは攻撃の中心的な役割を担ってきた。だが、川崎では藤井とファジーカスに次ぐ、3番手、4番手のオプションという位置づけになる。また、本職の4番だけでなく、ビッグラインナップでは3番ポジションでプレーするなど、様々な役割が求められる。
この変化にアジャストするのは簡単なことではないが、彼は難なく順応し、川崎での役割をこのようにとらえている。「オフボールでカットしたり、リバウンドを取る。これまでのチームでは多くのポゼッションで、僕がボールを持ってオフェンスを引っ張ることにエナジーを使っていました。川崎では他のことにもエナジーを使い、より多くの方法でチームに貢献していくだけです。試合毎に自分の仕事も変わってきます。今節は3番でのプレーが多かったので、自分のサイズ、スピードを生かしたカッティングをしたり、ポストアップをしました。そしてダブルチームに来たら、パスをさばいていく。すべての試合でベストな選択をするだけです」
また、ファーストオプションではなくなっても、積極性を持ち続けることが大切と強調する。「僕がアグレッシブに攻めることができれば、相手は2人(藤井とファージカス)へヘルプに行くことができない。自分の役割を遂行することで、チームとしての成功を助けることができます。だから、自分のするべきことを継続していきたいです」
Bリーグでの経験が豊富なアレンだが、B1で優勝争いをするようなチームでプレーするのは今回の川崎が初めてだ。もちろん、どんな環境でもチームのために全力を尽くしてきたが、「B2で優勝を争うチームにいたことはあったけど、B1では初めて。そこは今までとは異なる心境だけど、それを楽しめているよ」と語る。
これから川崎が、勝ち星を増やしていくにはアレンの攻守における多彩な働きは欠かせない。彼はその重責をこなせるスキル、献身的なメンタルを備えている。