佐藤友

献身的なプレーでチームをサポート

『ウインターカップ2023』男子準々決勝第3試合は、福岡第一が東山に74-71で勝利した。

試合時間残り14秒、3点差を追う東山のラストポゼッション。瀬川琉久の放った3ポイントシュートが外れ、試合終了のブザーが鳴ると、キャプテンの佐藤友はその場にしゃがみ込み、涙した。報道陣から心境を問われると「勝ちきれなかったことに関して、本当に申し訳ないです。 悔しいというより、勝たせることができなかったのが申し訳ないです」と話した。

両者は今年、交歓試合を含めて7度対戦し、お互いの良いところも悪いところも熟知している間柄。そしてシーズンラストマッチとなるこの試合で、東山はほとんどの時間帯で試合の主導権を握った。試合開始早々から、瀬川を軸としたアップテンポなオフェンスと福岡第一の強みを消すディフェンスで9-0のランに成功し、以降は常にリードを渡さず、一時はそれを18点まで広げた。佐藤友は得点だけでなくリバウンドや速攻のラン、飯田流生のドライブに対するクリアアウトなど、献身的な動きでチームの連携を助けた。

しかし、11点差で迎えた第3クォーターの中盤から福岡第一はじわじわと点差を詰め始めた。エース・崎濱秀斗が思うように得点を挙げられずにいる中、世戸陸翔や八田滉仁がコツコツとつなぎ、第4クォーター残り4分半、崎濱のスティールからのレイアップで点差は5点に。東山も佐藤凪のアタックや佐藤友のブレイクで対抗したが、残り3分から福岡第一に5連続得点を決められ、そのラストとなる残り27秒、崎濱のこの試合2本目となる3ポイントシュートでついに逆転された。

東山の大澤徹也コーチは試合終盤について次のように語る。

「後半、じりじりと詰められた時に、すごい嫌な雰囲気はしていました。とは言え、プレーをファールで切ったりして色々な対処ができると思ったし、タイムアウトも残ってたのでなんとかなる算段だったんですけど、瀬川がハードワークで消耗してしまって、うまく機能しなかった。あれはもう、第一の3年生の意地、崎濱の意地ですね。技術どうのじゃなくて、『絶対ここで決めなきゃいけない』っていうエースの意地をすごく感じました。最後にひっくり返されたのはコーチの責任。子供たちは本当によくやったと思います」

佐藤友

ポジション変更に戸惑い、しかし最後は腹をくくった

福岡第一の激しいディフェンスを絶えず受け続けた瀬川は、明らかに消耗していた。佐藤友も気づいたら右足が痙攣し、本来のパフォーマンスを発揮できなくなっていたという。

残り23.6秒、1点を追う展開でスローインのボールを受けた佐藤友は、ドライブからストップ、ターンし、フェイドアウェイシュートを放った。シュートはリングに嫌われ、こぼれ球を拾った福岡第一の森田空翔に決勝点を挙げられた。「本当はレイアップまで行きたかったんですけど、なかなか足が思うように動かなくて、タフショットになってしまいました」

大澤コーチはこの場面で、本当はピック&ロールをからませ時間を使ったオフェンスを展開したかったと明かす。しかし、その指示を出さず、最後はキャプテンの判断に託した。「友のシュートが外れて負けるのであれば仕方がない。自分の判断でシュート打ったことが彼の今後につながると思うし、次のステージではあれを決めきれる力を身につけてほしいです」

東山のオフェンシブなバスケに憧れて、新潟から京都に来た佐藤友だが、山あり谷ありの高校3年間だった。入学早々にヒザの大ケガを負い、2年次には中学時代にプレーしたウイングでなくパワーフォワードとしての役割を求められた。「あの頃はなかなか受け入れられなかったです」。当時の心境をそう明かすが、夏冬ともに全国を逃すという経験を経た最終学年は腹を決め、チームのために力を注いだ。

佐藤友のこのような葛藤をよく理解している大澤コーチは、次のように彼について語った。

「自分のやりたいプレーを制限して、チームのために色々な部分で身体を張ってくれた。3年生としてチームを引っ張ってくれた功績はすごく大きいと思うし、インターハイも含めて大きな成長を試合でも見られたので、僕としては非常に満足です」

この試合、佐藤友は15得点14リバウンドの大車輪の活躍。先に紹介したようにスタッツに表れないプレーでもチームを盛りたて、疲労やあせりが募る中でも仲間たちに声をかけ続けた。バスケットを始めた頃からの習慣としているコートイン時の深い一礼は、気づけばチームメートたちも真似するようになっていた。

この日の敗北は、自身が放った最後のシュートは、これからしばらく佐藤友の胸を疼かせるだろう。次なるステージとなる大学バスケで『大きな宿題』の答えを出したとき、佐藤友は初めてこの試合に感謝するのかもしれない。