「去年負けてしまった3回戦をぶっちぎりで勝ちたい」
鳥取城北の石谷洋祐ヘッドコーチは、桜花学園との力の差を現実的に受け入れた上で、「桜花学園を60点の抑えるのは無理な話。何とか80点に抑えて、できる限り食らい付きたいと考えていた」と話す。前半を16点ビハインドで終えたのは想定の範囲内で、「第3クォーターが勝負」と選手たちをコートに送り出した。ところが桜花学園もここを勝負どころと見定めており、7-31と一気に突き放す。石谷ヘッドコーチは「選手たちはよく粘っていたのですが、第3クォーターが勝負と言っていただけに、ここでやられてしまうと体力的にも気持ち的にも粘れなくなりました」と苦しかった試合を振り返る。
桜花学園は、第3クォーター終盤からベンチメンバーを投入しても勢いが衰えず、最終スコア111-60で初戦を勝ちきった。
粘って食らい付けば何かが起きるかもしれない、という相手チームの期待に反し、桜花学園は盤石の安定感を見せた。その中心にはゲームキャプテンの田中こころがいた。田中は28分半の出場で13得点。突出したスタッツを残したわけではないが、試合の流れを読んでペースをコントロールし、相手に付け入る隙を与えなかった。
去年も先発シューティングガードを務めていた田中は、スピードとスキルを駆使して相手ディフェンスに仕掛ける切り込み隊長の役割を担っていた。チーム全体のことを考えるよりも、自分の能力を駆使して局地戦で優位を作り出す。それが今は、正反対の仕事をこなすようになっている。
「今年は私がポイントガードをやらせてもらう時も出てきているので、落ち着いてゲームメークするのを意識しています。ベンチでも声を出して盛り上げることを意識して。何か変わったわけではなくて、2年生の時はなぜかクールに見られてしまってキャラを出せなかったんですけど、もともとおしゃべりだし、今出ているのが本当の自分です(笑)」
「オフェンスに限らずディフェンスも頑張っていきます」
桜花学園のベンチには、体調不良から回復した井上眞一コーチが座る。ウインターカップ前には井上コーチが直接指導するようになり、練習の厳しさは飛躍的に増したが、田中は「試合のプレッシャーに勝つには井上先生に練習で何を言われても勝たないといけない。そこは自分は絶対に負けないぞって気持ちです」と話す。
明日の3回戦では京都両洋と対戦する。桜花学園が掲げる目標は優勝以外にあり得ないが、去年のウインターカップで3回戦敗退という結果に終わったことを田中は忘れておらず、「去年負けてしまった3回戦をぶっちぎりで勝ちたい」と気合いが入る。
最終的に成し遂げたい光景は、「優勝してトロフィーを掲げるところ」と笑顔で語るが、その過程もしっかりイメージできている。「シューティングガードとしてはやっぱり得点を取りに行きたいんですけど、ディフェンスでまず自分がプレッシャーをかければ、それで周りもついてきてくれると思うので、オフェンスに限らずディフェンスも頑張っていきます」
チームキャプテンを務める黒川心音、精神的にタフになった福王伶奈に阿部心愛。そして昨年には田中がそうだったように、2年生ながら自分の得意なプレーで常に全力を出すことで主力の重責を務める深津唯生と、レベルの高いメンバーが揃う。ウインターカップ女王の地位を取り戻す、その一心で彼女たちは一つになっている。