文=丸山素行 写真=小永吉陽子、野口岳彦

アメリカ仕込みのシュートレンジでライバルとの差別化を図る

秋田ノーザンハピネッツに所属する谷口大智は201cm105kg、2メートルを超える数少ない日本人ビッグマンの一人だ。谷口は高校卒業後に『スラムダンク奨学金』の2期生として渡米して本場のバスケットを身をもって経験した。

U-15、U-18以来となる日本代表の招集を受けた今、谷口はルカ・パヴィチェヴィッチコーチの「チームの組み立て方」の上手さに驚いたと言う。「高校の時の経験だと、今までの日本代表はとりあえず来て練習して帰るっていうイメージでした。ですが今回は本当にチームを一から作るという練習内容だったので新鮮で、そこにいることができてうれしかったです」

シューティングではビッグマンでありながら3ポイントシュートも数多く放ち、高確率で決めていた。それもそのはず、谷口は自身の持ち味をサイズやパワーではなくシュートレンジの広さと言う。「ビッグマンだけど3ポイントまで打てる、自信を持ってそう言いたいです」

実は、このシュートレンジの広さはアメリカでの経験から来るもの。「アメリカでは主に3番(スモールフォワード)でプレーして、場合によっては2番(シューティングガード)をやって、ゾーンのトップをやったこともあります。そういう経験を積んで帰って来た点が、他の日本人ビッグマンとの違いになっていると感じています。その違いをどう見せるか、常日頃チームにいる時から意識しています」

「あこがれてちゃダメだ、倒さなければいけないんだ」

ルーキーだった2015-16シーズンは、常時オン・ザ・コート「2」のbjリーグにおいてプレータイム確保に苦しんだ谷口。しかし、オン・ザ・コート総計「6」を各クォーターに振り分けるBリーグになってプレータイムは大幅に増え、日本人ビッグマンとマッチアップする機会も増えた。25歳と若い谷口にとっては大きなチャンス。「Bリーグになって相手に代表クラスの日本人ビッグマンがいるとなったら、燃えないわけはないです」と不敵な笑みを浮かべる。

中でも、日本代表のインサイドを長きにわたって支えてきた公輔と譲次の『竹内ツインズ』には特別な思いがあると言う。「小学校の頃から見てきた選手です。僕は竹内選手にあこがれて洛南高校に行ったぐらいですから。あこがれの選手と同じコートに立ち、そこで競い合ってるというのは特別な思いがあります」

ただ、いつまでも『あこがれの存在』とは言っていられない。同じコートに立った以上はライバルだ。谷口も日本代表に選ばれたことで意識の変化を自覚している。「あこがれてちゃダメだ、倒さなければいけないんだ、という気持ちに開幕以降は変わりつつあります」

そんな気持ちの変化を感じながら日々ハードワークを続ける谷口だが、所属する秋田は苦戦が続いている。中でも勝負どころで試合に出られず、ベンチからチームの苦境を見るだけの状況が歯がゆいと悔しさをにじませた。

「僕が歯がゆく感じるのは、オン・ザ・コートが『2』の時に出れなくて、第4クォーターで逆転されてしまうのをベンチで見ている時です。どうにかして助けてあげたい、どうにかして手伝いたいという気持ちがあるので……」

現在、秋田は8勝24敗で東地区最下位に沈んでいる。しかし結果を別とすれば、全員が勝利に向かって努力を続けるチームに成長を感じていると谷口は言う。「すごく成長していると思います。勝ちたいから僕らも必死に練習しています。居残り練習もみんなやっています。少しでもチームの力になれるように、得点や一つのリバウンドから意識していければ結果につながると思うので、それを信じて僕らは貪欲にやっていきます」

秋田はイバン・ラベネルが加入し後半戦で浮上の期待が高まっている。そして、谷口の成長はそのままチームの浮上の力となり、その先には日本代表の座が待ち受ける。