ビリー・ドノバン

「30点差の状況でアンドレを厳しい状況に追い込んだ」

セルティックスはブルズに124-97で快勝し、東カンファレンスの首位を守った。この試合はインシーズン・トーナメントのグループ最終戦でもあり、セルティックスが次のラウンドに進出するには、同じグループのネッツがラプターズに勝った上で、自分たちが少なくとも23点差以上で勝つ必要があった。

セルティックスを率いるジョー・マズーラは試合前、大差で勝たなければいけない状況について「全く意識しない。どんな試合であろうと勝つためのプロセスを追求することにベストを尽くすのだから、今回だけ特別扱いするつもりはない」と断言していた。しかし、前半を終えて19点をリードし、第3クォーター途中にリードが35点まで広がり、ネッツも勝っているとなれば話は変わる。セルティックスは大差で勝ちにいき、マズーラもそれを認めた。「あの状況ではインシーズン・トーナメントのために全力を尽くすべきだと思った。第4クォーターのラスト8分間は、そういう意識だった」

それでも、選手たちは違和感を抱えながらプレーしていた。NBAでは大差が付いた試合で必要以上に相手を痛めつけるのを良しとしない。それはスポーツマンシップであり、対戦相手であっても同じNBAプレーヤーという仲間へのリスペクトだ。そんな彼らが嫌悪するシーンが第4クォーター途中に訪れた。ブルズのアンドレ・ドラモンドに対して故意のファウルを連発したのだ。

ドラモンドはキャリア通算のフリースロー成功率が5割を切る選手で、第4クォーターの頭にフリースロー2投のうち1本を外していた。残り7分22秒と残り7分2秒の時点で、故意のファウルで彼はフリースローを得る。この特殊な状況で、彼はフリースロー4本すべてを外した。

セルティックスは残り1分52秒までメンバーを落とすことなく戦って大量リードを守り、インシーズン・トーナメントのベスト8進出を決めた。ただ、後味の悪さは試合後も残った。ブルズの指揮官ビリー・ドノバンは、ドラモンドへのファウルを指示するマズーラに詰め寄り、声を掛けていた。ドノバンは言う。「どういうつもりだ、と言ったんだ。30点差の状況でアンドレを厳しい状況に追い込んだのが気に入らなかった」。ただ、マズーラが得失点差の事情があることを正直に明かすと、ドノバンはそれ以上の追求をやめ、ドラモンドをベンチに下げた。

セルティックスの選手にとっても不本意な戦い方だった。ドラモンドにファウルをしたドリュー・ホリデーはこう語る。「ルールのことは知っていたし、勝ちたい気持ちはあった。でも、試合を軽んじ、対戦相手への敬意を欠くことも分かっていた。コーチの指示に反発しているわけじゃない。僕はこの状況を招いたルールに腹を立てているんだ」

ジェイレン・ブラウンも同じ意見で、「最終的な目標は勝つこと、トーナメントの次に進むことだけど、試合とはそういうものじゃない」と語っている。もちろん、選手だけでなくマズーラにとっても厳しい決断だったのだろう。「これからドノバンにはあらためて謝罪し、ドラモンドにも説明をしたい」と言って会見を切り上げた。