ラッセル・ウェストブルック

「浮き沈みを繰り返しながら新たな学びを得てきた」

クリッパーズは開幕後にジェームズ・ハーデンをトレードで獲得してから攻守のバランスが崩れて勝てなくなった。それでもここ5試合では4勝と立ち直っている。そのきっかけを与えたのはラッセル・ウェストブルックで、『自分らしくプレーすること』を各選手が認められているチームにおいて、彼は先発を外れることをコーチに直訴。彼とハーデンのハンドラー2人の両立を避けることでチームは機能し始めた。

ただ、ウェストブルックはその代償を背負うことになった。レイカーズでチームの不振の責任を背負わされてクリッパーズに移籍して来た彼は、自分らしいアグレッシブなプレースタイルに回帰することで復活を果たしたのだが、控えに回ることで再びリズムを乱した。ベンチに回ってからの4試合、プレータイムは確保されていても、試合の局面に応じたプレーを選択せざるを得ない状況では本来の爆発力を発揮できず、得点は7.3へと半減し、フィールドゴール成功率は27.8%、3ポイントシュート成功率は20.0%と調子を落とした。

控えに回ることで何が変わったかと問われた彼は「分からない」と答え、「特にプレーする上で何かを変えているわけじゃない。ただリズムを合わせようとしているだけ。起用法がどうあれ、できる限りのベストを尽くすのが僕の役割だ」と語っている。

ウェストブルックの苦境をチームが放置していたわけではない。チームが低迷を脱したのは彼の犠牲的精神あってこそだと誰もが理解しており、次は自分たちが彼を助ける番だと考えている。ハーデンのプレーメークはペースが落ち、ウェストブルックだとペースが上がる。指揮官タロン・ルーはセカンドユニットの選手たちにより速いペースでプレーすることを求め、先発のポール・ジョージを早めに一度ベンチに下げ、ウェストブルックと一緒にプレーする時間を増やしている。

ジョージはサンダー時代からウェストブルックとの相性が良く、コート外でも絆が深い。ジョージは言う。「ラス(ウェストブルック)は自分で解決策を見いだせる選手だけど、僕らも協力したい。彼はペイントに入って勝負するのが得意だから、スペースを与えてあげて、周囲にシューターを配置することで助けられるはずだ」

現地11月25日のマーベリックス戦、ウェストブルックが本来のリズムを取り戻した。25分のプレーで14得点8リバウンド7アシストを記録。もう少し出場時間が長ければかつての代名詞であるトリプル・ダブルも可能だっただろう。リムアタックに彼らしい迫力が出て、だからこそアシストの効果も増す。自分らしく、溌剌と躍動するウェストブルックらしい姿がそこにはあった。

試合後のウェストブルックは「自分のやるべきプレーに集中していた」と語る。「それができている時は、誰も僕のエネルギーには太刀打ちできない。余計なことは考えなくていいんだ。ただコートに出て、やるべきことをやる。僕は高いレベルでディフェンスができるし、他のどんなプレーだってこなせる。そうやってインパクトを出していくんだ」

「まだまだ学ばなきゃいけない。良い時も悪い時もあるけど、浮き沈みを繰り返しながら毎日新たな学びを得てきた。チームとしての可能性は垣間見えているから、自分たちが特別な存在になれると信じて、自分たちのやり方を貫くだけだ」