ドリュー・ホリデー

「感傷的な気分で対戦したらケツを蹴り上げられるよ」

現地11月22日のセルティックスvsバックスは、ドリュー・ホリデーにとって古巣との初めての対戦となった。終盤に猛追を浴びたものの、第1クォーターで12点のリードを得たアドバンテージを生かして3点差で逃げ切る勝利。ホリデーは35分間のプレーで5得点8リバウンド1アシストを記録し、勝利に貢献した。

生涯バックスを誓った彼をトレードしたフロントの判断は極めてシビアなものだったが、彼は感情的なわだかまりを「ない」と言い切り、「バックスは望んでいたものを手に入れた。それに対して僕が怒ることはないよ」と穏やかに語る。

温厚で周囲に気を配り、誰に対しても分け隔てなく接する。チームメートが生存競争のライバルとなるNBAで、口先だけではない友情を育む。これまで在籍してきたどのクラブでも愛され、親しまれ、尊敬されてきたホリデーは、バックスでもその退団を惜しまれている。

ヤニス・アデトクンボは「ドリューと対戦するのは奇妙な気分だった。彼がもうチームにいないと思うとつらい。彼は勝者であり、良きチームメートだったからね」と語る。

ブルック・ロペスは35歳の大ベテランで、その長いキャリアで元チームメートと対戦する機会も多い。そのブルックは「彼は特別なんだ」と言う。「僕にとっても、みんなにとっても、このチームにとってもミルウォーキーの街にとっても、ドリューはとても大切な存在だ。今までのチームメートとの対戦とは違う」

優勝を一緒に勝ち取ったポイントガードが抜ける、というレベルとは違う話だ。クリス・ミドルトンは「もっと人間的なことだよ」と話す。「彼がコートの内外でみんなとどう接していたか。僕たちの大半にとって、彼は良き友人であり兄弟だった。だから『僕らの一員』じゃない彼を見るのは変な感覚だ。この3年間で経験したことすべてを思い出す。新型コロナウイルスに直面し、それを乗り越え、良い時期も悪い時期もあって、プレーオフを戦い、その中でいろんな話をした。バスケのこと、家族のこと、それ以外のこともたくさん」

バックスの中でアデトクンボだけが、トレードが決まった後に家族と一緒にホリデーと会って話をしたそうだが、他のメンバーにとっては久々の再開となった。だからこそバックスの誰もが彼に駆け寄り、言葉を掛けてハグをした。

NBAのビジネスはシビアなもので、トレードが決まれば3シーズンを過ごした仲間に挨拶する暇もなく新しいチームに移らなければならない。ボビー・ポーティスはドリューのことを「ブラザー」と呼ぶ間柄だが、最後に会ったのはトレードが決まる前日、CM撮影の現場だったそうだ。「試合中にふと優勝バナーを見上げると、彼のことを思い出す。思い出さずにはいられないんだ」とポーティスは言う。「でもドリューのことは分かっている。感傷的な気分で対戦したらケツを蹴り上げられるよ」

実際、ホリデーは対戦相手として手強く、彼を補強したセルティックスは大きくレベルアップした。ローテーションの8人全員が3ポイントシュートを打つことができ、放ったシュート84本のうち半分となる42本が3ポイントシュート。ロペスとアデトクンボをリムから引き離し、そのギャップを突くことで2点シュートも効率良く決めてくる。その攻撃を演出しているのがかつての彼らの21番、ホリデーだ。

アデトクンボは言う。「ドリューと対戦できるのは素晴らしいことで、気持ちが揺さぶられるよ。彼がもう同じチームじゃないのはつらいけど、僕らは前進しなきゃならない。偉大な選手、僕らが大好きな選手を失った。でも今のチームはその穴を埋めて前進できるはずだ。そうしなきゃならない」