文=大島和人 写真=B.LEAGUE

守備からトランジションにつなぐ第1クォーター33得点の猛攻

21日の同カードは、富山グラウジーズが「残り10秒4点ビハインド」の状況から琉球ゴールデンキングスを逆転する劇的な展開で先勝していた。この試合の第1クォーターも、富山が昨日の勢いのまま琉球を圧倒する。

外国籍選手のオン・ザ・コート数は両チームとも「2-1-1-2」だった。開始直後こそ琉球がレイショーン・テリーの連続3ポイントシュートなどでリードを奪ったが、富山は2-6のビハインドから水戸健史、デクスター・ピットマンらの得点で10得点のランを見せて、そのまま突き放す。第1クォーターに限ると水戸はバスケットへの積極的なアタックで点を挙げ、ピットマンもやはり8点。しかも2人は6分1秒のプレー時間でこのスタッツを残している。

水戸、ピットマンが退いた残り3分59秒からも、富山はさらに12得点のラン。残り1分21秒で点差は31-12まで拡大した。

琉球の伊佐勉ヘッドコーチはこう悔いる。「ゲームの入りで、富山の気迫がウチより数倍勝っていて、そこで勝負が決まった。あとオフェンスが上手くいかずちょっとだけ崩れたその瞬間に、タレント性のある富山の選手が生き生きし始めて、そのままゲームを引っ張られてしまった」

水戸も「ディフェンスをまず頑張れたことから、簡単なトランジッションバスケット、相手が崩れた段階でのパス回しからのイージーシュートが多く出た」と振り返る。その後やや点差は縮んだが、第1クォーターを終えた時点でスコアは33-15。富山がいきなり18点の大量リードを奪った。

ボブ・ナッシュヘッドコーチが「第2クォーターからはイーブンな展開が続いていたので、そこからはタフな試合だった」と振り返るように、そこから3つのクォーターは点差が大きく動かない展開になった。ただその後も間違いなく富山のペースだった。

第2クォーターの富山は山崎稜が2本の3ポイントシュートで6得点。第3クォーターは城宝匡史が6得点。試合終了まで各選手に満遍なくスコアが積み上がった。最終的には92-70の大差で、富山が連勝を決めている。

ボールを持ちすぎる悪癖が影を潜め、攻撃が活性化

ナッシュヘッドコーチは「ボールをシェアできて、25アシストと12ターンオーバーという数字も残せた。そこは評価できる材料です。今はケガ人がいない状況で、プレータイムもシェアして試合ができている」とボールと時間の『分け合い』を強調する。特に22日は全選手の出場時間が25分以下だった。

加えて出た選手がしっかりとプレーした。城宝は「選手の負担が少なくて、出た選手はみんな活躍してくれた。チームの底上げになる」と収穫を口にする。得点の分布を見てもピットマンの19得点が最多で、水戸が16得点、山崎が13得点、サム・ウィラードが12得点、ドリュー・ヴァイニーが11得点と5選手が2桁得点を記録した。

ボールのシェアには2つの背景がある。一つは無駄なドリブルをなくすという意識づけだ。ナッシュヘッドコーチは「自分たちがドリブルをつきすぎるとどういう結果になるかを(映像で)選手に見せていた。ボールを回すことでショットクロックも余るし、フロアを上手く使うことにつながる」と説明する。実際、水戸や宇都直輝のようなボールハンドラーが持ち過ぎる悪弊は影を潜めていた。

もう一つは昨年12月16日に加入した211cm128kgの大型センター、ピットマンの存在だ。長身で身体が強く、たくましい上半身で相手を背負うことができる彼は、インサイドでボールを収めることができる。ナッシュヘッドコーチは「ピットマンが加入してインサイドへの入りが良くなった。ボールがよく回るようになって、今日のようにアシスト数が増えた」と好影響を口にする。

城宝も「チームとしてボールを動かした方が良いオフェンスになる。無理しないでパスをさばいて、自分が動いて、という形にした。3ポイントシュートをオープンで打てたのは今までなかったことなので、すごく良かった」とチームオフェンスの進化を喜んでいた。

富山は9月25日の新潟アルビレックスBB戦から14連敗を喫するなどシーズン序盤に苦しみ、琉球との2連戦を迎えた時点では18チーム中でも最下位の勝率だった。しかし琉球戦の連勝で滋賀レイクスターズを勝率で逆転している。

城宝は「まだ全然なので……。早く5割に行けるようにやっていきたい」と表情は硬いままだったが、富山にとっては17年の反攻に向けて、そしてB1残留に向けて大きな連勝だった。

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