タイリース・ハリバートン

「僕がここに来てから最高のパフォーマンス」

ヤニス・アデトクンボが54得点12リバウンドと大暴れした試合で勝ったのは、バックスではなくペイサーズだった。バックスはデイミアン・リラードの欠場でクラッチタイムの破壊力を欠いたのかもしれない。バックスは出足が悪く試合開始から7分で18点もの大量ビハインドを背負い、その後はアデトクンボを中心に巻き返して第4クォーターにはリードを奪ったものの、攻守のプレー強度を最後まで維持できなかった。

ペイサーズは序盤のリードを失って相手に圧倒されるも、粘り強く戦うことで勝機を呼び込んだ。タイリース・ハリバートンは29得点10アシストを記録。残り1分半に決めた逆転の3ポイントシュートも含め、インパクト抜群のプレーを多数見せた。

ペイサーズのファンは彼の活躍を一際喜ぶ。彼らは熱狂的なことで知られるが、自分たちが小さなフランチャイズでスター選手を引き留める難しさを、これまで何度も身をもって経験してもいる。だからこそ今夏、ペイサーズと5年最大2億6000万ドル(約390億円)の契約延長に迷わず応じたハリバートンの応援には熱が入る。長期契約を結んだとしても未来の保証はないのがNBAだが、ファンは少なくとも今のところ、ポール・ジョージやビクター・オラディポ、ドマンタス・サボニスとは違うキャリアの選択をハリバートンが採ると信じている。

ペイサーズの司令塔であるハリバートンは、自分だけで試合を決めようとはしない。この試合で彼が放ったシュートは17本。それと変わらぬ18本をベネディクト・マサリンが打って26得点、マイルズ・ターナーが16本のシュートで21得点と、バランスの良いプレーメークでアデトクンボの脅威を退けた。

「良い気分だよ。今の僕たちが本当に良いバスケができていること、リーグのトップチームに勝てたこと、そして多くの選手が貢献する良い勝利だったことに満足している」とハリバートンは言う。

ハリバートンの契約延長はあったが大きな補強がなく迎えたペイサーズは、大きな期待をされることなく新シーズン開幕を迎えたが、ここまで6勝3敗と順調なスタートを切っている。それでもハリバートンはこの時期の結果に重きを置かず、内容に満足している。

「去年の年末あたりはチームが混乱していたけど、今は全く違う状況にある。全員が試合に絡み、勝つための方法を見いだそうという結束を感じる。それが今のチームの勢いに繋がっている。僕がここに来てから最高のパフォーマンスができていると思う」

チームの結束力を強める上で、ハリバートンの働きは大きい。この夏、チーム始動を前にペイサーズではルーキーやキャリアの浅い選手が集まって1週間ほどのミニ合宿を3度行った。ハリバートンはこのすべてに参加している。チームの中心選手と一緒に行動する機会が増えれば、若手はチームに馴染みやすくなる。すでにスター選手であり、代表活動があったにもかかわらず、チームのためになるのなら自然に行動できるのがハリバートンの強みだ。

「素晴らしい勝利だけど、喜ぶのは今だけだ。僕たちは自分たちのバスケをしている限り、どこが相手でも戦える。だから気持ちを引き締め直して、もう一度良いバスケをすることに集中するよ」。そう語るハリバートンとともに、ペイサーズは右肩上がりの成長を続けている。