「正直、まだ満足いくプレーができていない」
栃木ブレックスは先週末の川崎ブレイブサンダース戦との2試合に連勝し、千葉ジェッツに離されることなくリーグ全体2位の勝率をキープしている。
シーズン折り返し地点で栃木に加わった比江島慎は、Bリーグ復帰から4試合が経過し、ここまで平均20.2分のプレータイムで7.8得点、2.2アシストを記録。オーストラリアでの挑戦を終えて帰国したばかり、栃木では十分にチーム練習ができていないことを考えれば、可もなく不可もなく、といったところだろう。
それでも、比江島に寄せられる期待は並大抵のものではなく、その高い期待値を超えていないのが現状だ。彼自身、「正直、まだ満足いくプレーができていない」と言う。「帰ってきてすぐの試合なので、試合勘が戻っていないです。徐々に慣れていっている手応えはありますが、チームのシステムを覚えていかないと。試合に出てる間も余裕がないので」
独特なリズムと高いボールハンドリング技術から繰り出される比江島のドライブは、相手にとって脅威でしかない。だが川崎との第2戦では、この得意のプレーで2つのターンオーバーを犯した。そうしたミスは、「余裕もない」というメンタル面の影響だ。
「強気に行ってのターンオーバーならいいんですけど、弱気になってターンオーバーになったのが2回ありました。そこは申し訳ないです。パスを探してしまったり、自分のピックの使い方の感覚がまだ戻っていないところは正直あります。まだまだ安齋(竜三)コーチが求めるバスケができてないです」
それでも「ある程度ミスを覚悟でドライブしたり、迷いを捨てて、ビッグマンのクセだったりを見極めながらやっていきたい」と、課題を克服するビジョンはすでに見えている。
「熱量が素晴らしく、本当に後押ししてくれます」
栃木が川崎から挙げた連勝は、ともに終盤で逆転する苦しい展開。特に第1戦は、残り3分半で9点のビハインドを背負い、ラスト2秒でジェフ・ギブスが決勝点を挙げる劇的な勝利だった。ブレックスアリーナを埋めたファンは歓喜に沸いたが、比江島はそうした栃木の熱気、応援の力をあらためて実感していた。
「昨日の展開なんて、アウェーだったら多分無理だったと思うし、時間がない中で9点差をひっくり返したのは、このホームコートだからこそと思ってます」
栃木にとっては頼もしい限りだが、昨シーズンまでの比江島はこの『黄色い要塞』の圧力を身をもって体験してきた。だからこそ、栃木でプレーする喜びをあらためて噛み締めている。「熱量が素晴らしく、本当に後押ししてくれます。これだけホームコートアドバンテージを味わえるので、楽しくプレーできています」
どんな場面でも落ち着いてプレーしている印象が強かった比江島だが、シーズン途中に合流することの難しさ、短い間に2度移籍する環境の変化もあり、弱気な一面を見せている。だが、会場の大声援を力に変えることはすでにできている。チームメートやファンの後押しを受け、プレー面もメンタル面でもアジャストしていけば、比江島は遠からず本来の輝きを取り戻すはずだ。
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