ベテランセンターのビスマック・ビオンボを緊急補強
グリズリーズは開幕5連敗と低調なスタートを切った。ジャ・モラントが銃にまつわる不祥事で開幕から20試合の出場停止となっているが、これは当初から織り込み済み。ここを勝率5割で耐えながらチームのベースとなる力を伸ばし、シーズン終盤に勝負する想定だった。
ところが5連敗。まだ5試合ではあるが、対戦相手のうちナゲッツ以外は昨シーズンのプレーオフ進出を逃したチームという日程なのにもかかわらず1勝もできないのは、今後の先行きを不安視させるのに十分だ。
チームが機能しない第一の理由はケガ人の続出だ。開幕直前にスティーブン・アダムズが右膝を手術することになりシーズン全休に。ブランドン・クラークはアキレス腱断裂による離脱中。サンティ・アルダマは開幕前の捻挫が治らず、ルーク・ケナードは開幕戦で脳震盪を起こして3試合を欠場。2番手のポイントガードとして元気な姿を見せていたデリック・ローズも左膝に痛みが出て戦線離脱した。
もともとグリズリーズはディフェンスでハッスルするチームで、安定した守備が大崩れしない理由なのだが、アダムズが使えず、負担の増したゼイビアー・ティルマンSr.の調子が上がらない状況で、本来はパワーフォワードのジャレン・ジャクソンJr.をセンターに回したことで最優秀守備選手のジャクソンJr.まで力を発揮できなくなった。またポイントガードのマーカス・スマートはモラントの代役とあってオフェンスに意識を向け、それが本来はディフェンスで強みを発揮する彼の良さを失わせている。平均16.0得点とキャリアハイの数字を残してはいるが、ターンオーバーも倍増しているのが彼の苦境を表している。ローズの離脱でスマートの負担はさらに増え、苦しい状況だ。
ポイントガードとセンター、チームの軸がしっかりしない状況で、ザイール・ウィリアムズ、デイビット・ロディー、ジェイク・ラレイビアの若いフォワード陣のパフォーマンスも上がらない。
現地11月2日、グリズリーズはビスマック・ビオンボと1年契約を結んだ。アダムズ、クラーク不在のセンターの補強で、ジャクソンJr.をパワーフォワードに戻すのが第一の目的となる。31歳のベテランは起用さには欠けるが安定したビッグマンで、アダムズのようなパワーもパスの能力もないが、堅実に自分の仕事をこなす。ペイントを守り、相手のセンターとボックスアウトで戦い、スクリーンをセットする。ビオンボ自身がチームを救うような働きをしなくても、彼がここで身体を張ることで負担の減ったジャクソンJr.とティルマンが復調すれば、グリズリーズとしては『正解』となる。
モラントが戻って来る12月19日まで1カ月半。グリズリーズはまずは勝率5割ラインを目指して1試合ずつをこなすことになる。モラントが復帰したタイミングで、次は本格的な補強に打って出るだろう。ロスター枠はいっぱいだが、トレードに使える資産は多く、シーズン途中で解体に舵を切るチームから、繋ぎの戦力であるビオンボよりも計算できるビッグマンを獲得してチームをテコ入れしたい。開幕5連敗というスタートから立て直し、チームの右肩上がりの成長を維持できるか。少なくともモラント復帰までは苦しい時期が続くが、そこでどれだけ粘れるかが次に繋がる。