マーカス・モリス

ジェームズ・ハーデンとのトレードでシクサーズへ

マーカス・モリスにニコラ・バトゥーム、ロバート・コビントン、KJ・マーティン。ジェームズ・ハーデンとのトレードでセブンティシクサーズにやって来た彼らに、人々はほとんど注目を向けていない。全員が今シーズンいっぱいで契約満了を迎え、トレードでのサラリーマッチの駒として活用でき、そうでなくとも来年夏にはサラリーキャップを空けて大物フリーエージェントの勧誘に使える。その程度の認識だろう。

しかし、彼らはそれぞれモチベーションを持って新たなチームにやって来た。22歳と若いマーティンを別にすれば、モリスとバトゥーム、コビントンは30歳を過ぎたベテランで、全員がここシクサーズでプレーヤーとしての価値を証明するというモチベーションに燃えている。

それだけではない。コビントンはキャリア序盤の4シーズン半をシクサーズで過ごした選手。自分がNBAプレーヤーとしてブレイクした場所に戻って来られたことを「昨シーズンはあまりプレーできず、つらい1年だった。それもあって今回のトレードは素晴らしいチャンスだと思っている。チャンスをくれたことに感謝している」と言う。

コビントンは出場機会を得られず、家族の問題も抱えて「今年の夏は本当にまいっていた」と言うが、それだけに士気は高い。「ようやくすべてを乗り越えてバスケに集中できる。大変な中でもプレーする準備はきっちり整えてきたつもりだ。僕も様々な経験をして、スタッツには残らないような仕事も含めていろんなプレーができるようになった。まだ練習を一度見ただけで、これから学ぶ必要はあるけど、成長した自分のプレーでチームに貢献したい」

シクサーズ復帰のコビントン以上に、今回のトレードに興奮を隠せないのがマーカス・モリスだ。彼はNBAキャリア13年目にして故郷のチームでプレーする機会に恵まれた。現地31日の真夜中すぎにフィラデルフィアに到着した彼らは、朝8時にはチームの練習場に集まっていた。練習は見学するだけで、新たなチームメートとコーチングスタッフに挨拶し、メディカルチェックとメディア対応を行ったのだが、「ここでプレーできるなんて今も信じられない。興奮しすぎて一睡もしていない」というモリスのテンションは一日中高かった。

「みんなが僕のことをどう思っているか分からないけど、ここに来れたことは僕にとってすべてなんだ」とモリスは言う。「ここには幼少期から中学、高校、AAUでプレーした仲間がいて、家族もいる。故郷に戻って、地元の人たちの前でプレーできるなんて、キャリアの中でも最大のチャンスだよ。信じられない」

モリスもまた、クリッパーズでは微妙な立場に置かれていた。先発パワーフォワードではあったが、ポール・ジョージとカワイ・レナードが健康を取り戻した今シーズンには出番がない。ロールプレーヤーの宿命とはいえ、モリスはプレーする喜びを見いだせずにいた。「イーストとウェストでは違いが大きい。西海岸は僕に合わないんだ。自分が自分じゃないような気がした。バスケの面でも、自分の半分も出せなかった」

バトゥームにもマーティンにも、それぞれモチベーションはあるのだろう。彼らはみな、始まったばかりのこのシーズンを『失われた一年』にするつもりはない。ベストを尽くしてチームに貢献し、自分の価値を示そうとするはずだ。チームへの順応も、コビントンがジョエル・エンビードの親友であること、モリスとエンビード、ケリー・ウーブレイJr.がカンザス大OBであることがプラスに働きそうだ。