激しいディフェンスと堅実なプレーを武器にここまで約20分の出場機会を獲得

千葉ジェッツは10月29日、ファイティングイーグルス名古屋と対戦。出だしでつまずき、第1クォーターで2桁のリードを許す劣勢を徐々に追い上げるが、最後にガス欠となり73-88で敗れてしまった。

この結果を受けて千葉Jは、FE名古屋との連戦を1勝1敗で終え今シーズン5勝4敗。東アジアスーパーリーグ(EASL)の参戦によって開幕から毎週のように週3ゲームという過密日程の中、今節は原修太が合流したが、アイラ・ブラウンが欠場とフルメンバーで戦えない苦境が続いている。

今シーズンの千葉Jは、レギュラーシーズン53勝7敗と圧倒的な強さを誇った昨シーズンから複数の主力が去り、特に若手日本人選手のステップアップが求められる状況となっている。大倉颯太、二上耀、小川麻斗、金近廉と大学時代にそれぞれ世代屈指の活躍を見せていた有望株が揃う中、ここまで多くのプレータイムを獲得しているのが小川だ。

昨年12月末、日本体育大での3年目のシーズンを終えた小川は、同大バスケットボール部を退部し、千葉Jとプロ契約を締結。控えガードとして平均11分17秒のプレータイムを獲得し、ローテーション入りを果たした。そして、初めて開幕からプレーする今シーズンは、ここまで6試合の先発を含む全9試合出場で平均19分36秒と出番を大きく増やしている。

29日はシーズン最多となる28分50秒のプレータイムを記録。ジョン・パトリックヘッドコーチは、次のように小川のパフォーマンスを称えた。

「麻斗は頑張ってプレッシャーをかけてくれていました。シュートの確率は良くなかったですが、多分、彼の出ている時間のチームはポジティブだったと思います。また、あんなにハードにプレーして、0ターンオーバーは特に若い選手にとってすごく良いことです」

パトリックヘッドコーチは「若い選手たちは学生時代に自分のペースでプレーできていました。それがプロになると、相手のフィジカル、インテンシティが違ってきます」とすぐにプロのレベルに適応するのは簡単ではないと語る。ただ、小川に関しては、プロの激しさにも対応できていると見ている。

176cmの小川は、ここまでチームの絶対的なエースである167cmの富樫勇樹と同時にコートに立つ時間が多い。2番を担うことで小川が対峙する相手に対し、サイズ不足になるケースも少なくないが、指揮官は「強くプレーできれば身長は全然、関係ないです。ドイツで20年くらい前に、ジェフ・ギブス(現・サンロッカーズ渋谷)という185cmのセンターを見ているので分かっています」と、小川のフィジカルを信頼している。

さらに「麻斗はコンボガードで1番、2番をプレーしています。時には勇樹を休ませてポイントガードでもプレーできますし、ディフェンスではボールマンにプレッシャーをかけられます」と、貢献度を高く評価している。

「最後に出ているからこそ、しっかりとチームを勝たせられる選手になりたい」

将来性豊かな若手が揃う千葉Jの中でも、今の小川は頭1つ抜けた出番を得ている。しかし、本人は「昨シーズンに比べるとプレータイムは結構もらえているほうだと思いますが、個人的にはあまりいいパフォーマンスができていないです」と厳しい自己評価だ。

ディフェンスについては「大学の時に比べて身体も作ってきました。ディフェンスをしっかりとやれているところは強みというか、チームにいい影響を与えられているかなと思います」と、パトリックヘッドコーチも評価するフィジカルの強さを生かし手応えを得ている。また、ここまで9試合すべてで、多くてもターンオーバーは1つと堅実なプレーができている。

一方で高校、大学時代と定評のあった得点面については、ここまで平均3.1得点、フィールドゴール成功率22.2%と苦しんでいる。その原因として小川は、積極性が失われていると分析している。「まずは勇樹さんを見てしまったり、周りにパスを出すことを意識しすぎている。躊躇してシュートを打っているところがありました」

エースの富樫やゴール下の要であるジョン・ムーニーと共にプレーしている時間帯が多くなれば、特に実績を残していない若手選手が中心選手へのパス供給を第一に考えてプレーするのは当然かもしれない。しかし、それでは相手も守りやすいし、何よりも小川の持ち味を出せない。頼りになる先輩の助言もあり、今の小川は自分でアタックする積極性を出しつつある。

「ここ数試合、原選手にハーフタイムの時、『勇樹を見ずにもっとリングにアタックしていこう。ミスをしてもいいからアタックして、無理な時はパスを出せばいい』といった感じの声をかけてもらっています。それが自分にとって自信になりましたし、伸び伸びとプレーできることにつながっています」

ルーキーと言えるシーズンで順調なスタートを見せている小川だが、試合に出ているからこそルーキーというくくりでの評価は不要と、主力選手としての強い覚悟を示す。

「コーチや先輩たちは『ルーキーだから勝ち負けは気にしないで思いっきりやれ』と言ってくれます。ただ、『ルーキーだから』という見られ方は、自分にとってプラスにならない。第4クォーターの残り3分からなど、最後に出ているからこそ、しっかりとチームを勝たせられる選手になりたいと思います」

本日、千葉JはEASLの試合をアウェーのフィリピンで行う。この過密日程で勝利を積み重ねていくためにも、積極性を取り戻した小川が持ち味の得点面でもインパクトを与えることが求められる。