「信頼関係が壊れてしまえばどうなるか──」
ジェームズ・ハーデンはセブンティシクサーズのチーム練習には参加しているが、プレシーズンゲームには出場していない。契約延長を巡ってダリル・モーリー球団社長との関係が破綻してトレードを要求。モーリーの下ではプレーしないとの決意は固いが、ロケッツ退団時とは違って練習には真面目に取り組んでいる。
それでも、トレード先と見られるのはクリッパーズだけで、その交渉は進んでいないよう。クリッパーズはハーデン獲得にテレンス・マンや1巡目指名権を手放すことを拒否。クリッパーズはハーデンを魅力的な戦力として見ていたとしても、シクサーズの状況を見れば譲歩する必要がないのは明らかで、できる限りの好条件を引き出す駆け引きを続けるだろう。
そのハーデンが、今回の始動から初めてメディア対応に応じた。「みんなのサポートや愛情には感謝しているけど、僕個人としては非常に厳しい時期にある。僕はずっとここにいるつもりだったけど、フロントは将来のプランに僕を入れていなかった。こうなってほしくはなかったけど、僕にはどうしようもない。ただ今はプロとしてトレーニングを一生懸命やるだけだ」
ハーデンとモーリーとロケッツ時代からずっと一緒に働き、NBA優勝を目指した仲。ネッツでハーデンが移籍を望んだ時にはすぐさまモーリーが獲得に動いた。「僕らは長い間、いつもコミュニケーションを取ってきた。でもそれは失われてしまった。昨シーズンのプレーオフで敗れた時からね」
ハーデンに問題がないわけでもない。ロケッツ時代はともかく、ネッツでの1年半はケガが多く、勝負どころのシーズン終盤、プレーオフの時期にトップパフォーマンスを発揮できないという印象が付いた。しかし、ハーデンとすれば「戦犯に仕立て上げられてはたまらない」という気分だろう。勝っても負けても個人ではなくチームなのがバスケという競技であり、彼個人としてはセルティックスと対戦した昨シーズンのカンファレンスセミファイナルでのハーデンは、初戦で45得点、第4戦で42得点と爆発。7試合すべてでチームハイのアシストを記録している。
シクサーズでプレーし続けるためにモーリーと仲直りする可能性はあるかと問われたハーデンは「ノー」と即答し、「問題は今の状況じゃない。これは人生における問題なんだ」と続けた。「人との信頼関係は結婚のようなもの。その信頼関係が壊れてしまえばどうなるか、それはとても単純なことだ」
今オフにトレード要求をしたもう一人のスター選手、デイミアン・リラードはバックスに移籍し、新たな挑戦に向けた準備を進めている。しかしハーデンは開幕が間近に迫った今も身の置きどころが決まらない。「15年もやってきて、こんなことになるとはね」とハーデンは語るも、自身の窮地を嘆く弱さは彼にはない。
「自分にコントロールできることに集中するよ。このリーグに長くいて、いろんな出来事を見てきた。僕について誰が何を言おうと勝手だけど、このリーグで失敗をしないことはあり得ない。失敗したり、物事が上手くいかない時こそ、ただバスケに集中して練習するんだ」