7シーズン554試合のうち欠場わずか6試合、3ポイントシュート成功率40.2%
バディ・ヒールドは8シーズンのNBAキャリアの中でペリカンズ、キングス、ペイサーズの3チームでプレーしてきた。ルーキーシーズンの途中にデマーカス・カズンズのトレードに加えられてキングスに移り、一昨シーズン途中にドマンタス・サボニスやタイリース・ハリバートンを含む大型トレードの一部としてペイサーズへと移籍している。
3つのチームで計7シーズンを過ごしたが、『勝てるチーム』でプレーしたことはない。、キャリア通算で16.1得点、4.4リバウンド、2.6アシスト。3ポイントシュート成功率は40.2%で、39%を下回ったのは途中で移籍を経験した2021-22シーズンだけ。間違いなくNBA最高のシューターの一人としてのスタッツを残しているにもかかわらず、彼はこれまでプレーオフの試合に出場したことが一度もない。彼のキャリアのハイライトは、NBAオールスターの3ポイントコンテストという『余興』での優勝なのだ。
もう何年もレイカーズ移籍が取り沙汰されているが、実現には至らなかった。ただ、それでもヒールドは腐ることなく、極めて安定したパフォーマンスを発揮している。3ポイントシュート成功率と同じぐらい素晴らしいのは、彼の出場試合数だ。7シーズンで行われた554試合のうち、欠場したのはわずか6試合。どこか少しでも痛ければ欠場して無様な姿を見せるリスクを避け、遠征に参加せず家のテレビで試合を眺めるスター選手が増えていく中、ヒールドは黙々とプレーし続けている。
勝てるだけの戦力がない環境でプレーを続けるうちに、彼は「ディフェンスのできない選手」とのレッテルを貼られている。しかし、今のNBAで最も重要視される3ポイントシュートのスキルがこれだけ高く、メインのボールハンドラーではなくてもプレーメークができ、ただ良いパスを待ってのキャッチ&シュートだけでなく自らチャンスを作り出すこともできるにもかかわらず、正しい評価を得られないのは理不尽と言わざるを得ない。
ただ、その流れも変わりそうだ。ヒールドとペイサーズの契約は来年夏まで。『The Athletic』によれば、今夏にペイサーズがオファーした新契約をヒールドは断ったそうだ。ペイサーズはサラリーキャップに余裕があり、好条件を提示したはずだが、ヒールドの気持ちはもう次の挑戦へと向かっているのだろう。現時点で他チームとの具体的な交渉は進んでいないが、ペイサーズはトレーニングキャンプ開始までにトレードをまとめるべく動くと予想される。
ペイサーズはヒールドを放出しても、若いベネディクト・マサリンやアンドリュー・ネムハードがその穴を埋められる。チームの強化方針としても、彼らにプレータイムを与えて経験を積ませるべきだろう。さらにはブルース・ブラウンも補強しており、ヒールドを放出することに問題はない。ビッグマンの補強、ハリバートンとTJ・マッコネルに続く控えポイントガード、あるいは将来のための指名権とのトレードはペイサーズにこそメリットがある。
勝てないままヒールドは30歳になった。だが、彼にはまだまだ多くのエネルギーが残っている。ここから『勝てる選手』としてのキャリアを築くことも、十分に可能なはずだ。