「納得のいくゲーム展開にはならなかった」
天皇杯による中断が明けてBリーグが早くも再開。千葉ポートアリーナでは、日曜に行われたばかりの千葉ジェッツvs栃木ブレックス、天皇杯決勝カードの再現が行われた。
それでも、同じ試合は二度とない。栃木で注目されたのは、新加入の比江島慎だ。シーホース三河を昨夏に退団し、オーストラリアリーグに挑戦。今年に入って帰国した比江島は、栃木への加入を決めた。この日、初めてベンチ入りを果たした比江島は、第1クオーター終盤に途中出場で栃木でのデビューを飾ると、15分のプレータイムで6得点4アシストの活躍を見せた。
天皇杯ファイナルを再現するかのように、コンタクトの激しい激戦において、比江島はコートに送り出されるたびに違いを作り出す。第1クォーターには重い展開を打ち破るファーストシュートを決め、第2クォーターに入るとアシスト連発で栃木に勢いをもたらした。
もっとも、71-80で敗れたこともあり、試合後の比江島から景気の良い言葉は出ない。「チームとしても個人としても納得のいくゲーム展開にはならなかった。自分としてもチームに迷惑をかけてしまって、それは申し訳なかったと思います。まだリーグ戦は長いので、気持ちを切り替えてやっていきたい」と反省を語る。
オフェンス面では良いプレーも間違いなくあったのだが、「うまく行かなかったプレーのほうを鮮明に覚えているので……」と語るのは比江島らしい。「前半は何も考えずにアグレッシブに行けたが、後半は考えてしまった。後半のほうが大事なので。みんな見るからに疲れていたのですが、休ませるという部分では何もできなかった」
「勝負どころで自分がプレーして勝たせる」
栃木を率いる安齋竜三ヘッドコーチは、楽観的にも悲観的にもならず、チームと比江島の現状を冷静に見て、次のようにコメントしている。「オフェンスに関してはかなりプラスになる。ピック&ロールが多いので、そこで彼は生きてくると思う。あとはスペーシングだったり、そこは彼がやりやすいように構築していきたい。ただディフェンスとリバウンドの意識はまだ全然足りないと感じたので、そこは練習しないといけないし、彼がやってきたディフェンスとウチのやり方は全然違うので、そこは早く慣れてほしいと思います」
そういう意味では、チームに合流したばかりでほとんど練習ができていない比江島に15分のプレータイムを与えたのは意外だった。「ゲームに慣れさせるのも一つあります。練習ができない分、ゲームの中でアジャストできればというところ。もうちょっと本当は使う予定だったんですけど、うまく行かない部分もあったりしたので」と指揮官は説明する。
先を見据えればワールドカップ予選も来月に控えており、十分なチーム練習の時間を確保するのは容易ではない。それを言い訳にしない意味でも、実戦で経験を積ませてチームのメカニズムに合わせていくのは大事だ。ただ、何もかも比江島に合わせるつもりはない。「良い選手だからずっと出すというのは僕の中にはない。ダメだったら下げます。徐々にここから、チームとして構築していければと思います」と語っている。
そのことは比江島も認識している。「疲れは全くないので、そういう意味ではコンディションは100%です」と言う彼は、短期での目標を「できるだけ早くアジャストすること」と設定している。もちろん、その先は栃木を優勝へと導く存在になることで、「勝負どころで自分がプレーして勝たせる、そんなプレーができるようになればと思っているので、早く連携を高めてそういう場面でプレーできるようにと思っています」と、すぐにでもエースの責任を負う覚悟だ。
ここまでの栃木は、勝負が懸かった最後の攻めではほぼ確実にライアン・ロシターを使ってきた。このクラッチタイムを比江島にも託せるとなれば、チームとしては大きなステップアップとなる。慣れるまでに時間は必要だろうが、そう遠くないうちに『日本のエース』の姿が見られるはずだ。
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