今村佳太

「アジア競技大会はいろいろなことを試せる大会です」

9月18日、アジア競技大会に出場する男子日本代表の公開練習が行われた。今大会の代表メンバーは、先日まで行われたFIBAワールドカップ2023に出場した12名に加え、途中で落選した合宿参加メンバーも揃って不参加となっている。そんなフレッシュなチームを牽引するのは、Bリーグの所属チームで中心選手として活躍してきた面々。琉球ゴールデンキングスの今村佳太もその1人だ。

ここ数年、Bリーグの日本人選手の中で有数のハイパフォーマンスを見せている今村は、トム・ホーバス体制になってからフル代表デビューを果たした。しかし、2022年2月に行われたワールドカップアジア地区予選window2の2試合に出場し、合計で3ポイントシュート9本中2本成功に終わると、そこから再び代表のユニフォームを着ることはなかった。

琉球の選手として、地元の沖縄アリーナでの開催となるワールドカップ出場に大きな意味を見出していた今村だけに、当然代表入りを逃したことに対して大きな悔しさが残った。だが、「これでバスケットボール人生は終わる訳ではない」と気持ちを切り替えており、次のような意気込みで大会に臨む。「アジア競技大会はいろいろなことを試せる大会です。次の目標はパリ五輪に出ること。アジア大会の先にパリ五輪があるどうこう以前に、自分をアピールできる最大の機会なので、しっかりと責任を持って自分のできることをやっていきたいと思います」

今回のメンバーを見ると、所属チームで主にハンドラーの役割を担っているウイングポジションの選手は今村のみだ。攻撃の起点としてオフェンスを引っ張っていくことは今村が求められている役割であり、自身も強く意識している部分だ。「3ポイントの爆発力に加え、このチームは良いシューターが揃っていて、彼らにオープンなシュートを打たせることも自分の役割と思っています。その部分は徹底してアピールしていきたいです。ポイントガードはクリエイトできる選手たちですけど、ウイングはどちらかというとキャッチ&シュートを得意とする選手が多い。だからこそ、僕としては自分の持ち味を生かせるチャンス。(コーリー)ゲインズヘッドコーチも、そこは自分に任せてくれているのでやりがいがあります」

今村佳太

「チームに還元できるよう1日足りとも無駄にせずにやっていきたい」

振り返れば、代表活動におけるこれまでの今村は、限られた時間の中で自身の持ち味をチームに浸透させることができず、その結果、3ポイントシュートを積極的に狙い続けるのみで、チャンスメーカーの部分を披露できない消化不良の形で終わっていた。しかし、上記のコメントのように今回はこの点について不安はない。また、6月に行われたアジア競技会メンバーによる合宿では、ホーバスと次のようなやりとりがあったと明かす。「3ポイントはどうしても波があるので、そこに左右されないようにアタックとクリエイトをこの2シーズン特にやってきたつもりです。その部分についてはトムさんも見てくださっていました。『ここまでハンドラーをできるとは思っていなかった』って言われて、「あれっ…」と思いましたけど(笑)」

このエピソードを笑顔で明かしてくれたように、今村は過去の苦い経験を成長の糧としている。実際、Bリーグ優勝チームの大黒柱という結果で証明した。アジア競技大会では、この進化した姿を代表チームでもしっかり見せる準備はできている。「(前回の代表活動は)思い切りの部分などで、チームとうまくマッチすることができなかったです。それも自分の実力ですが、今回はそこから積み上げてきたものがあります。前とは違う、成長した部分を見せられればと思っています」

アジア競技大会は9月26日に初戦を迎え、ベスト8に残った場合は10月6日まで大会を戦うことになる。そうなると、今村は琉球のBリーグ開幕戦である10月5日の佐賀バルーナーズ戦に間に合わない。だからこそ、日本代表のためはもとより、琉球のためにもこの大会でしっかりと成果を挙げる必要があると今村は思いを強くする。「代表に来させてもらっているのも、開幕節をしっかり戦ってくれるチームメートがいるからこそです。だからこそアジア競技大会は『少しでも成長できれば』というような場ではないです。チームに還元できるように、大きくパワーアップしないといけない期間で、1日足りとも無駄にせずにやっていきたいです」

ワールドカップ2023における日本代表の躍進により、Bリーグの注目度はかつてない程に高まっている。アジア競技大会でも結果を残せれば、Bリーグにとってはさらに大きな追い風となる。そのためには『琉球の今村』を代表で見せることが欠かせない。