思うような結果を残せず「暗闇の中にいるようです」
今シーズンのシーホース三河は、主力を担ってきた比江島慎と橋本竜馬がチームを去った影響から開幕5連敗を喫し、その後の7連勝で一時は持ち直したが、その後は勝ったり負けたりを繰り返し、現在は16勝15敗と中地区4位に甘んじている。天皇杯では準々決勝に駒を進めたが、アルバルク東京の堅守を崩すことができず、エースの金丸晃輔も徹底マークの前に沈黙。55-73と大敗して大会を後にした。
その試合で4得点に終わった西川貴之も「やっぱりミスが多かったです。もちろんアルバルクさんの力というのはかなりありますけど、それ以前に僕らの自滅というか、負けるべくして負けたというようなゲームでした」と不甲斐ない結果に終わった試合を振り返った。
それでも自分たちの現在地を知るという意味では、チームにとっても、そして西川にとっても良い機会となったかもしれない。
レバンガ北海道から三河に移籍した昨シーズン、西川はプレータイムを勝ち取ることができず、それに伴いスタッツも著しく低下した。今シーズンに懸ける思いは誰よりも強かったはずだが、開幕戦で先発するも、それ以降はベンチスタートが続いた。11月10日のサンロッカーズ渋谷戦で12試合ぶりに先発起用されたが、チャンスを生かせず無得点に終わり「出口の見えない暗闇の中にいるようです」と苦しみのどん底にいた。
だが、その後の西川はプレータイムを伸ばし、ようやく個人とチームのスタイルが噛み合い上昇し始めた。天皇杯前直前に行われた古巣の北海道戦では、初戦で18得点、第2戦では今シーズン初となる20得点を挙げ、チームを勝利に導いた。
メンタルの変化が自身の行動を変えることに
復調のきっかけは何だったのだろうか? 西川は「特別、何かきっかけがあったかと言うと分からないです」と困惑しながらも、チームに貢献することを第一に考えたことで好転したのではと推測する。「どうやったらチームに貢献できるのかを常に考えてきたつもりです。オフェンスはどうなるか分からないですけど、ディフェンスに波はないと思うので、そこは毎日やろうと。それが今、ようやくちょっとずつ結果に繋がっているのかなと思います」
これまでの不調は、三河の強みであるインサイドを強調する意識が強すぎて、自分で攻める積極性を欠いてしまったことに起因していた。「メンバーも変わって、その中でインサイドを起点にするのを邪魔しちゃいけないというか、それをやらなきゃいけないという変な考えになっていました」
その凝り固まった考えを変えたのが、鈴木貴美一ヘッドコーチから言われた「トランジションも出さないと勝てない」という言葉だった。「ある日、コーチにそう言われて、トランジションでプッシュすればいいんだと僕の中で気づきました。自分が行くと思えば、遠慮というか、パス優先にはならないので。行ける時に行ってやろうというメンタルですね」
その意識の変化は、自身の行動にも変化を与えた。「一人で背負い込むタイプ」という西川だが、桜木ジェイアールや金丸に自らの意見を伝えるようになったという。「こうやったほうが良いのでは? と思ったら言うようになりました。昨年まではあまり言わなかったですけど、最近は自分もやらなきゃというか、人任せにしたくないと思っています」
どん底にいた時期は「バスケットをしたくないと思ったり、プライベートでも楽しめなかった」という西川だが、今は周囲の信頼を勝ち取り、その実力をようやく発揮しつつある。復調の兆しが見えた今だからこそ、この天皇杯での負けも糧にして、今後のパフォーマンスに期待したいものだ。
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