比江島慎

文=丸山素行 写真=バスケット・カウント編集部

「コミュニケーションが大事なスポーツ」と実感

栃木ブレックスは今日、オーストラリアのブリスベン・ブレッツを退団した比江島慎の入団記者会見を行った。

比江島がシーホース三河を退団し、栃木と契約を結ぶという驚きのニュースが流れたのは昨年の7月19日。その後、8月2日にブレッツとの契約がまとまった。今年に入りブレッツ退団が決まったことで、あらためて栃木に加わることになった。

比江島とともに登壇した鎌田眞吾社長によれば、「7月の時点で契約合意、契約に至っていない状況の中でオーストラリアのチームからオファーが来て、オーストラリアのチームに入団したという状況。代理人を通して情報を共有しながら、年末の段階でチームから離れることを聞き、再度契約の交渉をさせていただいた」とのこと。

オーストラリアで得たものを問われた比江島は世界レベルの高さとフィジカルを体験できたことを挙げた。「プレー面では日本では体験できない高さやフィジカルをオーストラリアでは体験できたので、ある程度成長できました。ドライブの質やシュートセレクションを見極めないと向こうでは通用しないというのも分かりました」

そして、海外挑戦を決めた時点で危惧された英語力の乏しさもあり、「あらためてコミュニケーションが大事なスポーツだということを確認できた」という。また自己表現があまり得意ではないことを自認する比江島だけに、自己主張の大切さも痛感した。

「海外に行くと自分を変えなきゃいけない。もう一人の自分を作るじゃないですけど、良い意味でも悪い意味でも海外では自分を主張しなきゃいけなかったと思っています。自分からリーダーシップをとっていかなきゃいけないですし、今後も変えていきたい」

比江島慎

好調なチームへの途中加入に「不安がないことはない」

栃木は現在25勝6敗。全員バスケを体現し、故障者が多い中でもリーグ2位の好成績を収めている。日本代表でもその力を証明しているように、即戦力である比江島の加入は栃木にとって確実にプラスになるが、その一方でチームケミストリーの構築が容易でないのも事実で、調子の良いチームに途中で加入する難しさもありそうだ。

比江島も「自分が入ることによって崩してしまうんじゃないか」と不安を口にした。「オフェンスの部分では貢献できるとは思うんですけど、ディフェンスのシステムなどは覚えなきゃいけないことも多いと思うので、不安がないことはないです」

それでも、初めてプレータイムを得られなかった経験をしたことで、プレーしたいという意欲や、栃木に貢献したいというポジティブな思いが不安を上回っている。「プレーできる喜びや楽しみのほうが大きいです。早くプレーしたい気持ちのほうが強いです」

オーストラリアで結果を残せず「悔しい思いはもちろんある」と話した比江島だが、その悔しさは栃木でより輝くための起爆剤となるだろう。

「温かく迎えてくださった栃木ブレックスに感謝し、その恩返しをするためにも全身全霊でプレーします。個人の成長もそうですけど、なにより栃木で優勝するために来たので、優勝できるようにしっかり準備していきたい」

なお、現在はメディカルチェックを行っており、このままスムーズにいけば、1月16日の千葉ジェッツ戦からベンチ登録が可能となっている。