ディロン・ブルックス

ブーイングをMVPコールに変える「称賛されるのは素晴らしい気分」

ディロン・ブルックスはNBAで6年のキャリアを持ち、2021年12月19日に記録した1試合37得点がキャリアハイの数字だ。1試合48分間のNBAで367試合出場している彼は、ワールドカップの3位決定戦でキャリアハイを上回る39得点を挙げた。延長を含めて42分のプレーでフィールドゴール18本中12本成功、3ポイントシュートに至っては8本中7本成功とほぼパーフェクトだ。

アメリカのディフェンスは、カナダのエースであるシェイ・ギルジャス・アレクサンダーにダブルチームを仕掛け続けた。ブルックスは多くの場面でオープンとなり、チャンスが来るたびに迷わずにシュートを放ち、決めていった。

マニラでの彼はレイカーズファンの多いフィリピンのファンから大ブーイングを浴びてきた。NBAでのブルックスは悪役で、特にプレーオフでレブロン・ジェームズを挑発し続け、「年寄りは気にしない。僕から40得点を奪わない限りはリスペクトしない」とまで言い放ち、『悪役』の印象を決定的なものとした。

しかし、それがブルックスなりの戦い方だ。プレーオフで敗れた後、彼は「それが僕なんだ。後悔はしていない。僕は競争者であり、常に誰かと競う。今後も自分らしくやっていく」と語り、そのスタイルをカナダ代表にも持ち込んだ。

ワールドカップで3位になった試合後の会見で、ブルックスは試合中とは打って変わった静かな面持ちで「このユニフォームを着てプレーできて良かった。予選ではプレーできなかったけど、ここで仲間たちと一緒にこのユニフォームを着て、国を代表してカナダ人のためにプレーできたのがうれしい」と語る。

体調不良でプレーしなかったグリズリーズでのチームメート、ジャレン・ジャクソンJr.の状態を気にかけながらも、「みんなアメリカと対戦したがっていたから、実現して良かった。僕としては毎試合でやってきた準備、チームメートにとって良いリーダーであろうとしてきたことを思い出しながら試合に臨んだ」と言う。

彼を包んでいたブーイングは、最後にはMVPコールに変わった。「ジャカルタでも同じようなことはあったから2回目だね」と、ブルックスは少しだけ表情を和ませる。「試合中に称賛されるのは素晴らしい気分になる。でもまだ仕事は終わっていないし、ここで満足している者はこのチームには誰もいないよ」