バックスはアデトクンボの疑念を払拭する『新たな可能性』を示せるか
ヤニス・アデトクンボは先日、バックスとの契約延長について慎重な発言をした。10年間を過ごしたバックスに最大限のリスペクトを払いつつ、彼は「みんなが同じ考えを共有して、家族と離れる時間を犠牲にして優勝を目指すんだと感じられなければ、契約延長はしない」と語る。
2021年にNBA優勝を果たしたが、それから2年で主力の高齢化が進み、アデトクンボの現在の契約が終わる2026年よりも前にチームは世代交代をしなければならない。ここでチームがアイデンティティを失い、優勝を狙えないようなチームに後退するようなことがあれば、アデトクンボは活躍の場を別に求めるということだ。
バックスは優勝しただけでなく7シーズン連続でのプレーオフ出場と東カンファレンスの強豪であり続けているが、世代交代の難易度は非常に高い。ブルック・ロペスが35歳、ドリュー・ホリデーが33歳、クリス・ミドルトンは32歳。28歳のアデトクンボより上の世代の主力選手たちはいつ年齢的な衰えが出てきてもおかしくない。それでもアデトクンボがいる限りはプレーオフ進出が確実で、ロッタリーでしか指名できない有力なルーキーを獲得することもできない。そしてミルウォーキーという小さなフランチャイズは、大物フリーエージェントを呼び入れるには不利だ。
アデトクンボは2020年の12月にバックスと5年間の契約を結んでいる。この時、まだ優勝から50年近く遠ざかっていたバックスをアデトクンボが見限る可能性に賭けていたのがヒートとニックスだった。両チームともサラリーキャップに流動性を持たせ、いざアデトクンボがバックスと決裂した時に、迎え入れる準備を整えていた。
その後、ヒートはジミー・バトラーとバム・アデバヨを中心に優勝を狙えるチームとなったが、ニックスは中堅クラブの域を抜け出していない。それでもローテーションに入る選手はすべて20代で、ロスターの流動性を持ちつつ地力を伸ばし、飛躍の機会をうかがっている。
来年の夏、アデトクンボがバックスと決裂するようなことがあれば──。今回もニックスはその備えをしているように見える。チームで最も年俸が高いのはアデトクンボと同じパワーフォワードのジュリアス・ランドル。ここを置き換えれば、ジェイレン・ブランソン、RJ・バレット、ジョシュ・ハート、アデトクンボ、ミッチェル・ロビンソンというロスターが完成する。最年長でも来年29歳になっているアデトクンボで、何年も優勝争いを演じて『王朝』を築く可能性すら感じさせる陣容だ。
バックスの次世代の姿はまだ全く見えておらず、このニックスより魅力的な戦力を整えるのは簡単ではない。ヘッドコーチ経験のないエイドリアン・グリフィンが指揮を執る新シーズンに結果を出せないようなことになれば、バックスはアデトクンボの疑念を払拭するだけのクラブの新たな可能性を示せるだろうか?
もう何年もNBAのトッププレーヤーとして活躍しているアデトクンボだが、まだ28歳。ニックスとしては、多くの犠牲を払ってでも獲得する価値がある。待ち焦がれるアデトクンボがニックスの一員となる日は、果たして来るのだろうか?