ジョシュ・ホーキンソン

トータルの貢献度はルカ・ドンチッチを上回り大会1位に

ワールドカップの舞台で歴史的な3勝を挙げ、パリオリンピックの出場権を手に入れた日本代表において、最大の殊勲者は間違いなくジョシュ・ホーキンソンでした。5試合が終わった段階で平均得点21.0は7位、2ポイントフィールドゴール成功率73.5%は1位、10.8リバウンドは2位、そしてトータルの貢献度はルカ・ドンチッチを上回る1位と、『今大会で最も活躍したビッグマン』と言っても過言ではありません。

世界最高のビッグマンが日本にいるという事実そのものが驚愕ですが、いったいホーキンソンの何がすごいのかは伝わりにくいものがあります。そしてホーキンソンのプレーはNBAでも通用するのか、妄想が膨らんでいきます。

ホーキンソンはニコラ・ヨキッチに代表されるポイントセンタータイプで、ビッグマンとは思えないハンドリングスキルを持ち、ディフェンスリバウンドから自分でドリブルしてシュートまでいくコースト・トゥ・コーストを決めることもあれば、ハイポスト近辺でパスを受けると両サイドのシューターへ鮮やかなキックアウトパスを通していきます。現代的なビッグマンとしてプレーメークに参加してくれる選手は、これまでの日本にはなかった武器でした。

さらにホーキンソンが素晴らしかったのはプレーメークにかかわりながら、何度もゴール下にダイブして最高のフィニッシャーとしても活躍したことで、しかも超高確率で決め続けてくれました。ゴール下で重要な高さや運動能力で突出しているわけではありませんが、自分がパスを受けるためのスペースをうまく構築し、パスが前後にズレても高いキャッチ能力でフォローし続けました。

そして何よりもパスキャッチからシュートリリースまでが異常に速く、相手ビッグマンにブロックのチャンスを与えませんでした。それでいてレイアップ、フック、フローター、バンクシュートと様々なフィニッシュパターンで確実に決め続けたことは、高さがないはずの日本がインサイドで得点を重ねられた最大の要因でした。この速さと正確さはNBAのビッグマンでも滅多に見かけることがないレベルです。

ディフェンス面でも、高さ不足でブロック力には欠けるものの、カバーリングのタイミングが適切かつ、カバーした後に自分のマークマンに戻るのが速く、ゴール下のスペースを埋め続けることで相手のシュートミスも誘えば、セカンドチャンスを与えませんでした。特に日本が3-2や2-1-2のゾーンディフェンスに切り替えると、ホーキンソンの存在価値は目に見えるように高まり、コーナーまで追いかけているはずがゴール下のスペースも埋めている献身性と運動量は驚くべきものでした。

ジョシュ・ホーキンソン

高いバスケIQに裏打ちされた判断力の速さ

一つのディフェンスポゼッションで誰よりもフィジカルに戦い、誰よりも運動量が多かったホーキンソンですが、マイボールになると速攻の先頭を走っていることも頻繁にありました。ハーフコートオフェンスでもトップ付近でプレーメークに絡み、ゴール下へダイブすることもあれば、コーナーに広がって3ポイントシュートを決めるなどストレッチ役としても機能し、攻守の切り替えやプレーチョイスなど、あらゆる場面で判断の速さが際立っていました。

多彩なスキルに判断の早さと運動量、そしてプレーの正確性。ホーキンソンはワンプレーだけを切り取れば平均点の選手ですが、連続したプレーにおいては今回のワールドカップで最高のビッグマンでした。NBAにはホーキンソンよりも背が高い選手も、速い選手も、強い選手も、上手い選手も掃いて捨てるほどいて、正面からぶつかれば上回ることは難しいでしょう。ただ、シチュエーションに応じて自分の武器を見事に使い分けるインテリジェンスと献身性は、ホーキンソンしか持たない武器としてNBAでも通用しそうです。

例えば、難しいプレーはしないものの、溢れんばかりの献身性と堅実性を誇るケボン・ルーニーをセンターとして起用するウォリアーズは、昨シーズンにビッグマンの控えが足りなかったこともあり、ホーキンソンを補強したら面白そうにみえます。他にもドマンタス・サボニスの控えに悩んでいるキングスのように、ガードにエースがいてペースの速いチームであればホーキンソンの特徴が生きてきそうです。

分かりやすい強みを持たないホーキンソンがNBAへと進むのは現実的ではないでしょうが、ワールドカップという舞台で見せた多様な能力とインテリジェンスは特別な輝きを放っており、日本代表がパリへの切符を手に入れることになった最大の要因だったことは間違いありません。ファウルトラブルとなったドイツ戦を除き、ほとんど交代することなくコートに立ちながら、誰よりも動き続けたホーキンソンに、感謝しても感謝しきれない今大会でした。